2部構成となっている本作の前半は“タイラーの罪”と題して、裕福な家庭に長男として生まれたタイラーの物語が綴られています。一家が裕福であるのは父の苦労と努力のおかげということがひしひしと伝わってきますが、だからこそ父は長男であるタイラーに対してとても厳しく接します。そんなタイラーはレスリングのスター選手でしたが、肩の故障が判明。でも、父や周囲の期待を考えたら無理をせざるを得ない状況で、どんどんと追い詰められていきます。さらに別の大きな問題が発生し、タイラーの人生の歯車は一気に狂い始めます。一方、後半で描かれる“エミリーの愛”と題したストーリーは、様相が一変します。兄に起こった問題が妹のエミリーにも当然ながら影響しますが、妹は妹で人生を取り戻していきます。
この2つのストーリーは、向かう方向が全く別なのですが、強い愛が鍵となっているのは同じです。ではなぜ同じ愛でもこうも違ってしまったのか。その答えは、男女の恋愛と、親子愛が描かれた兄と妹の2つの物語を観ることで得られるのではと思います。悪意ではなく愛によっても、人は壊れていく。でも同時に、愛によって人は救われることもある。そんな愛の裏表を描いた作品です。そして、本作にはトレイ・エドワード・シュルツ監督が厳選した名曲がたくさん使われている点も魅力です。映画公式サイトには、プレイリストが載っているのでぜひチェックしてみてください。
恋愛の切ない部分と幸せな部分の両方が描かれていて、恋愛中の人にとっては、とても感情移入しやすいでしょう。反面教師として観る部分も出てくるかも知れませんが、全体的には人の優しさに溢れたストーリーなので、観終わった後にお互いに優しくなれそうです。アツアツのカップルにも、友達以上恋人未満のカップルにも観て得られるものがあると思います。
恋愛についても、親子関係についても、特にティーンの皆さんにとって等身大で観られるストーリーです。1人で悩みを抱えている人はタイラーの状況を観て、自分はどうすべきか客観的に考えられそうだし、孤独な学生生活をしているようなら、エミリーの姿を観て希望が持てるでしょう。友達と観に行くのも良いですし、親子で観るのも良いと思います。
『WAVES/ウェイブス』
2020年7月10日より全国公開
PG-12
ファントム・フィルム
公式サイト
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TEXT by Myson