REVIEW

その手に触れるまで

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『その手に触れるまで』イディル・ベン・アディ

神を“出し”に、人が間違った方向に導かれる怖さを痛感。本作では13歳の少年アメッドが、尊敬するイスラム指導者に感化され、過激な思想を持ち、盲信的、狂信的な行動に走ってしまう様子が描かれていますが、ピュアだからこそ染まりやすい怖さがあり、未熟だからこそ無謀で、暴走してしまう怖さがあります。アメッドの場合は、環境的に宗教が身近にあるのと同時に、父が不在であること、思春期で多感な時期だからこそ、こういった状況に陥ってしまったのかも知れませんが、彼の行動を客観的に観て、「神とは何ぞや」「信仰とは何ぞや」と考えさせられます。アメッドは、実態としてある自分の人生や生活よりも、異次元のことに振り回されて、何のために生きているのかわからない状況になっているのが皮肉で、でも生身の人間のぬくもりを知ってこそ、彼は苦悩から解放されるのだということが、本作では描かれています。全体的にとてもスリリングでありながら、ラストでふと緊張がほぐれる、絶妙な描写。今作でも、監督のダルデンヌ兄弟の手腕を実感させられます。

デート向き映画判定
映画『その手に触れるまで』イディル・ベン・アディ

過激な思想に取り付かれているアメッドの恋愛は、やはり歪んでいて、「おいおい!」と言いたくなる展開が出てきます。なので、ロマンチックなムードになるタイプの映画とは言えず、宗教観の違いでギクシャクしているカップルには、どう作用するかわかりません(苦笑)。日本人にとってポピュラーなテーマとは言えませんが、宗教でなくても、誰か特定の人の考えにあまりにも執着していたり、支配されているような状況だったら、逆に一緒に観ると、客観視できるきっかけになるかも知れません。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『その手に触れるまで』イディル・ベン・アディ

主人公アメッドが13歳ということもあり、中学生以上の皆さんは等身大で感情移入できる部分もあるのではないでしょうか。何となく日々いろいろなことに悶々としている時に、何かに影響されて夢中になっていく…。何かに夢中になることは良いことですが、それが人を傷つけることであってはいけません。宗教もこれだけ世の中にあるということは、人の役に立つからだと思いますが、正しい理解をする必要があり、一部の人間の利益のために使われるものではあってはならないことを、本作を観て考えてもらえれば嬉しいです。

映画『その手に触れるまで』イディル・ベン・アディ

『その手に触れるまで』
2020年6月12日より全国順次公開
ビターズ・エンド
公式サイト

© Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

Netflix映画『マイケル・ジョーダン:ラストダンス』マイケル・ジョーダン 心が弾む!バスケットボール映画特集

バスケットボール人気が出てきているのを感じる昨今。…今回は、バスケットボールにちなんだ作品をズラリとご紹介します。

映画『リュミエール!リュミエール!』 リュミエール!リュミエール!【レビュー】

映画の始まりが述べられる際、トーマス・エジソンと、リュミエール兄弟(ルイとオーギュスト)の名前がよく挙がります…

映画『デューン 砂の惑星PART2』ゼンデイヤ ゼンデイヤ【ギャラリー/出演作一覧】

1996年9月1日生まれ。アメリカ出身。

映画『チネチッタで会いましょう』ナンニ・モレッティ/マチュー・アマルリック チネチッタで会いましょう【レビュー】

タイトルに入っている“チネチッタ”とは…

Netflixドラマ『さよならのつづき』有村架純/坂口健太郎 ポッドキャスト【だからワタシ達は映画が好き22】2024年11月後半「気になる映画とオススメ映画」

今回は、2024年11月後半に劇場公開される邦画、洋画、Netflixの最新ドラマについてしゃべっています。

映画『Back to Black エイミーのすべて』マリサ・アベラ Back to Black エイミーのすべて【レビュー】

類稀な才能を持つ歌姫エイミー・ワインハウスは、2011年7月、27歳の若さで逝去…

映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』川栄李奈さんインタビュー 『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』川栄李奈さんインタビュー

真面目な公務員と天才詐欺師チームが脱税王との一大バトルを繰り広げるクライムエンタテインメント『アン…

映画『ドリーム・シナリオ』ニコラス・ケイジ ドリーム・シナリオ【レビュー】

ニコラス・ケイジ主演、『ミッドサマー』のアリ・アスターとA24が製作、さらに監督と脚本は『シック・オブ・マイセルフ』のクリストファー・ボルグリと聞けば、観ないわけには…

映画『海の沈黙』菅野恵さんインタビュー 『海の沈黙』菅野恵さんインタビュー

今回は『海の沈黙』であざみ役を演じ、これまでも倉本聰作品に出演してきた菅野恵さんにお話を伺いました。本作で映画初出演を飾った感想や倉本聰作品の魅力について直撃!

映画『六人の嘘つきな大学生』浜辺美波/赤楚衛二/佐野勇斗/山下美月/倉悠貴/西垣匠 六人の嘘つきな大学生【レビュー】

大人になると、新卒の就活なんて、通過点に過ぎないし…

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『淪落の人』アンソニー・ウォン/クリセル・コンサンジ 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.2

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』ムロツヨシ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【国内40代編】個性部門

個性豊かな俳優が揃うなか、今回はどの俳優が上位にランクインしたのでしょうか?

映画『あまろっく』江口のりこ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【国内40代編】演技力部門

40代はベテラン揃いなので甲乙つけがたいなか、どんな結果になったのでしょうか。すでに発表済みの総合や雰囲気部門のランキングとぜひ比較しながらご覧ください。

REVIEW

  1. 映画『リュミエール!リュミエール!』
  2. 映画『チネチッタで会いましょう』ナンニ・モレッティ/マチュー・アマルリック
  3. 映画『Back to Black エイミーのすべて』マリサ・アベラ
  4. 映画『ドリーム・シナリオ』ニコラス・ケイジ
  5. 映画『六人の嘘つきな大学生』浜辺美波/赤楚衛二/佐野勇斗/山下美月/倉悠貴/西垣匠

PRESENT

  1. 映画『バグダッド・カフェ 4Kレストア』マリアンネ・ゼーゲブレヒト/CCH・パウンダー
  2. 映画『型破りな教室』エウヘニオ・デルベス
  3. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP