本作の前に作られた短編も観ることができたのですが、短い間にドラマが凝縮されていて、この物語が伝えたいことがバシッと表現された衝撃的なラストに圧倒されました。そして、その世界に存在する、ものすごい緊張感が体感できる描写になっていて、長編への見事な布石となっています。また、人種差別は、子どもが本当の意味をまだわからないうちから、親や周囲の影響で偏見や間違った価値観を受け継いでしまうという恐ろしさも実感させられます。ちなみにこの短編は、アカデミー賞®短編映画賞を受賞していて、一般の方も観られる機会が出てきたら、ぜひ観て頂きたいです。
長編は短編の要素を受け継ぎながら、別のキャラクターで物語が進行します(一部同じキャストが、別のキャラクターを演じています)。長編の本作は、スキンヘッドに、憎悪を示すタトゥーを全身に入れた白人至上主義者ブライオンが主人公で、彼にまつわる実話を基に作られています。ネタバレになるので、ブライオンがどんな道を辿るかは伏せますが、本作を観ると、レイシズムの背景にある別の問題も見えてきて、レイシズムが生まれるメカニズムがいろいろあることがわかり、私達が気付いていない視点を与えてくれます。緊張感がずっと張り詰めた作品ですが、希望を感じることができる部分もあります。人間の弱さ、強さの本質を考えさせられるストーリーになっていて、とても見応えがある作品となっています。主演のジェイミー・ベルをはじめ、ダニエル・マクドナルド、ビル・キャンプ、ヴェラ・ファーミガなど俳優達の演技も見ものです。映画好き女子必見の作品ですよ。
辛いシーンもありますが、ロマンチックなシーンもあります。愛する人の存在が、主人公ブライオンに大きく影響する点で、カップルで観る意義も感じられると思います。人間関係が一番厄介ですが、それが大事な人の人生にも影響することがヒシヒシと伝わってくるので、将来一緒になりたいと思っている真剣交際中のカップルはぜひ一緒に観て、覚悟を決めてください。
若い皆さんにこそ知ってもらいたいストーリーです。R-15なので15歳未満の人は15歳になったらぜひ観てください。皆さんの日常にも、差別やいじめがあると思いますが、そんなことをする人は本当に幸せなのでしょうか。本作は実在の白人至上主義者を主人公にした映画ですが、人種差別をする側の人間達の背景にある問題を知ることもできるし、ただ対立するのではなく、そんな彼らでも救おうとする人達がいることも知ることができるので、物事の見方が変わり、視野が広がると思います。
『SKIN/スキン』
2020年6月26日より全国順次公開
R-15+
コピアポ・フィルム
公式サイト
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TEXT by Myson