1998年の作品でエディ・マーフィ主演の『ドクター・ドリトル』のイメージが未だに強くありましたが、本作を観て「あれ?こんなテンションだったっけ?」と思うくらい、違ったトーンが印象的です。そりゃそれぞれ主演俳優が醸し出す世界観が違うので、当然と言えば当然なのですが…。とにかく、ドクター・ドリトルは、心に病を抱える動物達を診ていて、動物と話せるという設定は同じものの、今作のドクター・ドリトルは悲壮感が一層漂っていて、ロバート・ダウニーJr.が主演だからこその味が出ています。そして、旅を通して、動物とドリトルが自分の心の問題を克服していくアドベンチャーとして、そのスケールの大きさも魅力となっています。さらに主演のロバート・ダウニーJr.を始めとして、アントニオ・バンデラス、マイケル・シーン、ジム・ブロードベントという名優が揃っているのに加え、動物の声を、エマ・トンプソン、ラミ・マレック、トム・ホランド、オクタヴィア・スペンサー、マリオン・コティヤール、セレーナ・ゴメス、レイフ・ファインズといった蒼々たるメンバーが務めている点も要注目。事前にどの動物の声を誰が担当しているか確認した上で観ると良いでしょう。心に病を抱えているのは動物で、彼等をかわいらしく描いているので重々しくなっていないのも本作の良い点ですが、ここに出てくる動物には人間が抱えている問題が投影されているとも言えて、ただの動物映画ではなく、とても身近なストーリーとして観ることもできます。ファミリー映画ではありますが、大人も充分に楽しめる作品です。
とても悲しい出来事があってから立ち直れない人が、それでも前を向くきっかけとなるのは、どんなことでしょうか。本作のドクター・ドリトルも大きな苦難を抱えて引きこもってしまいますが、あることがきっかけで現状を打破する努力をすることになります。そして、心にさまざまな問題を抱えた動物達も、それぞれに自分との闘いに挑みます。普通なら重くなるストーリーですが、それを明るく愛らしく描いた本作は、鬱々とした気持ちを少し前向きにさせてくれるかも知れません。気分転換にデートで観るのもアリではないでしょうか。
いろんな動物が登場して、しかもしゃべるので、その様子を観るだけでもキッズは楽しく観られると思います。ティーンはもっと深いテーマに気付いて観ることができると思うので、年齢に合った観方が自然にできるでしょう。動物達はかわいいだけではなく、それぞれに抱えた試練と向き合うので、ドラマチックな展開も見どころです。誰にでも悩み事はありますが「自分も頑張ってみよう!」「自分にもできるかも!」と勇気をもらえるはずなので、ぜひキッズやティーンの皆さんに観て欲しいです。
『ドクター・ドリトル』
2020年6月19日より全国公開
東宝東和
公式サイト
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TEXT by Myson