物語の舞台は1982年、メキシコシティの高級地区ラスロマス。ソフィアは、ここで暮らすセレブ妻達も羨むような生活を送っていましたが、メキシコ経済が歴史的な危機を迎え、彼女達セレブの生活は徐々に追い込まれていきます。それでも見栄を張り、わが家は安泰と振る舞うソフィア。でも怖いもので噂は瞬く間に広まり、ソフィア一家も破綻するのではと周囲が気付き始め、セレブ妻達の勢力図がガラッと変化していきます。お金を吸引力とした薄っぺらい人間関係も、お金で装備した美しさも、所詮お金で成り立っている時点で脆く、どんなに豪華なモノに囲まれていても、人は幸せになれないことを本作から教わります。そして、体裁だけは繕えても、人間として堕ちていき、品位の欠片もない人間になっていくソフィアの変化にとても空しさを感じます。贅沢を味わったらなかなか落とせないとは言いますが、お金にしがみつくためになくすモノの大きさに気付かないでいられるなら、そういう人はそのままのほうが幸せなのかも知れないと、そういう意味でも空しさを感じます。肩パットがさりげなく、権力やプライドの象徴のように使われていたり、説明的でなく、さりげないところに主人公の環境や心情の変化を投影した描き方も巧みです。この映画が日本で公開される2020年は、新型コロナウィルス感染症拡大の影響で経済が混乱しつつあります。そんな状況で観る本作から学び取れることは多いのではないでしょうか。
自分の結婚観で何を優先しようが自由ですが、経済的なところだけに期待を持って結婚しようとしている人は、カップルで本作を観ると、穏やかな雰囲気ではいられないかも知れません。新型コロナウィルス感染症の件もそうですが、今は何が起こってもおかしくなく、絶対的に安泰なんてあり得ません。そうなった時に、経済的に困窮しても一緒にいられる相手かどうかは悩むところだと思います。そういう意味でも1人でじっくり観るか、本当に仲の良い友達と一緒に観ることをオススメします。
子どもの頃は家にお金がどれくらいあるのか、親がどれくらい稼いでいるのか、どうやって稼いでいるのか、詳細まで教えてもらえないことも多いと思いますが、当然ながらお金は降って沸いて湧いてくるものではありません。贅沢な生活を送っていてもいつそれが変わるかは誰もわからないもの。家庭毎に事情は異なるし、教育方針も違うと思いますが、世の中のお金の仕組みを子どものうちから知っておくことは備えにもなります。大人向けの作品ですが、中高生くらいならだんだん自分でお金を管理するようになるので、こういった映画を観て、お金が人に及ぼすパワーを知っておいても良いと思います。
『グッド・ワイフ』
2020年7月10日より全国順次公開
ミモザフィルムズ
公式サイト
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TEXT by Myson