日本でも大ヒットした韓国ドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』で知られるイ・ヨンエが、パク・チャヌク監督作『親切なクムジャさん』(2005)出演以来14年ぶりに、本作でスクリーンに復帰しました。私生活では結婚、子育てを経ての復帰となったそうですが、本作では7歳で失踪した息子を捜す母親役を好演しています。映画の序盤からかなりスリリングな展開が続き、最後まで気を抜けず、いろいろな意味で予想を遥かに超えてきます。本作で印象深いのは、いなくなった幼い息子を長年捜し続ける母親の執念を描いた作品なのかと思いきや、それだけに留まらず、失踪の裏にある社会問題を生々しく描いている点です。さまざまなキャラクターを通して人間の闇を見せつけられるわけですが、何とも言いようのない気分が押し寄せてくるのは、“その罪”が私達にも無縁ではないからなのでしょう。私達は日常でいろいろなものに蓋をして、目を背けて生きていると実感させられる内容になっています。とにかく見応えも抜群なので、ぜひ多くの方に観て欲しいです。
テーマが重いので、ムードのあるデートをしたい場合には不向きでしょう。ホラーのような怖さとは異なりますが、心理的に怖いシーンが多いので、観ている間は隣を気にしている余裕がないかも知れません。でも、映画そのものは期待を裏切らないので、今日は映画デートの日という時には一緒に観るのも良さそうです。ターゲット的には老若男女問わない内容です。
キッズやティーンの皆さんは、本作で登場する子どもの目線で観ると思いますが、感情移入すればするほど恐怖心を体感することになるでしょう。大人の怖さ、社会の冷たさも大いに感じられると思います。こんな目には絶対に遭って欲しくないですが、私達の知らないところでこういう実態も起こりえることを学ぶには良い題材になる映画です。PG-12なので、小学生は保護者と一緒に観てください。
『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』
2020年9月18日より全国順次公開
PG-12
ザジフィルム、マクザム
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TEXT by Myson