誘拐や監禁された被害者が長い間犯人と共に過ごすことで、犯人に連帯感や好意を抱いてしまう心理現象“ストックホルム症候群”。本作は、“スウェーデン史上、最も有名な銀行強盗事件”として知られる5日間の立てこもり事件“ノルマルム広場強盗事件”を基にしており、この事件は“ストックホルム症候群”の語源とされています。
映画の冒頭で“ストックホルム症候群”の話であることが示された上で物語が始まるのですが、銀行強盗のラース(イーサン・ホーク)は落ち着きがなく、ワーワー騒いでいるばかりで、最初男性的な魅力はあまり見当たりません。なので「いくら一緒にいても人質が好意を寄せるのかしら?」と思ってしまうのですが、徐々にこのラースの人間味溢れる部分が見えてきて、観ている側も同情が芽生えてきます。最後には観ているこちらもラース達が助かるように願う気持ちになっていて、ストックホルム症候群を体感できますよ。ちょいちょい笑えるシーンも出てくるのですが、観終えると何だか良い話みたいになっていて、不思議とホッコリしてしまいます(笑)。そうなると、「強盗しなくて良かったんじゃない?」って思ってしまうのですが、これが実話というから余計に滑稽だし、人間っておもしろいと実感します。
イーサン・ホークの演技が絶妙で、ロン毛のマーク・ストロングも新鮮です(笑)。いろいろな観方で楽しめる作品なので、映画ライトユーザーからヘビーユーザーまでオススメです。
非常事態に置かれた男女が親密な関係になっていく様子が描かれていて、デートで観ると複雑な気持ちになるかもしれません。でも、状況が状況なので自分達に置きかえて観るというほどではなく、過敏に避ける必要もないと思います。内容そのものがわかりやすく、観やすいので、デートで観るのもアリでしょう。
人間の心理というのはおもしろいと感じるストーリーで、実話ということもあり、ある種勉強になる部分もあるでしょう。誘拐や監禁という状況は体験したくないし、あってはいけないことですが、困難を乗り越えること、同じ問題に直面して解決しようと一緒に考えて行動することが、連帯感を生むという部分は、参考になるかもしれません。上映時間も92分と短いので、興味があれば観てみてください。
『ストックホルム・ケース』
2020年11月6日より全国公開
トランスフォーマー
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TEXT by Myson