今回は、2020年に出演作が目白押しの阿部純子さんにインタビューをさせて頂きました。『461個のおべんとう』では、高校生の虹輝の葛藤も印象的に描かれていますが、16歳の頃から俳優を続けている阿部さんに、やりたいことが見つからない時はどうすれば良いかなど聞いてみました。
<PROFILE>
阿部純子(あべ じゅんこ):矢島真香 役
1993年5月7日生まれ、大阪府出身。2010年映画『リアル鬼ごっこ2』で、ヒロインに抜擢され、女優デビュー。慶應義塾大学在学中に、芝居と英語を勉強するためニューヨーク大演劇科に留学。2014年、『2つ目の窓』(河瀬直美監督作品)で主演を飾り、第4回サハリン国際映画祭主演女優賞、第29回高崎映画祭で最優秀新人賞を受賞した。近年の主な映画出演作に『孤狼の血』『サムライマラソン』『ソローキンの見た桜』『Daughters』『罪の声』などがある。2021年は、『燃えよ剣』などの映画が公開を控えている。
置かれた環境によって見つけたものが自分を作っていく
マイソン:
本作にはすごく美味しそうなものがたくさん出てきたのですが、普段阿部さんがテンションが上がる食べ物ってありますか?
阿部純子さん:
私はシーフードが大好きで、カニ、エビ、イクラが好きなので、海沿いに行くのが好きです。新鮮なものが頂けるので、もう大好きです!
マイソン:
甲殻類がお好きなんですね。ロケなどでいろいろなところに行くと思うんですが、思い出深い食べ物はありましたか?
阿部純子さん:
いろいろなところに行かせていただいているので悩みますが、愛媛でいただいた鯛茶漬けが美味しかったです。その場で捌いていただいて、1つの丼にしてもらって豪快に食べました。本場の味というか、そこでしか味わえない味で贅沢にいただきました。
マイソン:
美味しそう!やっぱり海の幸がお好きなんですね。今回の作品では、美味しそうなお弁当はもちろん、井ノ原快彦さんが演じた一樹と、阿部さんが演じた真香の関係も印象的でした。「一樹さんと一緒にいると寂しくなる」っていう真香の台詞がすごく生々しいと思いました。
阿部純子さん:
わかります!
マイソン:
阿部さんご自身は一樹のような男性ってどう思われますか?
阿部純子さん:
尊敬できる部分がある男性ってすごく魅力的だなと思います。でも一樹さんは自分の好きなものに対して一直線なところがあるので、そこでおいてきぼりにされるのはちょっと寂しいなっていう真香の気持ちはよくわかります。言いたいのに言えない感覚とかもわかるなって思いながら演じていました。
マイソン:
真香の行動や決断で共感できる部分は具体的にありましたか?
阿部純子さん:
やっぱり複雑ですよね。真香の場合は虹輝くん(道枝駿佑)のことを考えての家族の在り方や、一樹さんにとって1番良いのはどういう形だろうってことを考えていたので、そういった部分はすごく思慮深いというか、私がそこまで考えられるタイプかわかりませんが、もし自分がその立場になったら真香と同じようにするんじゃないかなと思いました。
マイソン:
一樹が息子にやりたいことは何でもやれと言っている一方で、息子からするとお父さんのパワフルなバイタリティ溢れる部分がプレッシャーに感じているように見えました。あのやり取りがすごくリアルで、それでも最後は相互作用というか両者が成長していく姿がすごく良いなと思いました。虹輝みたいにまだやりたいことが見つからない若者は世の中にたくさんいると思いますが、阿部さんだったら彼等にどんなアドバイスをしますか?
阿部純子さん:
まず、やりたいことができる現代って奇跡じゃないかと思います。戦争もないし、やりたいことをやらせてもらえるのはすごくありがたいなと。選択肢がたくさんあり過ぎて決められないというのもアリだと思うんです。それはそれで、いろいろな自分の気持ちを心にしまわなければ、いろいろな分野で友達ができるわけですし、自分をその環境に置いてみて、その環境によって見つけたものとかが自分を作っていくものだと思います。絶対にこれってすぐにわからなくても、それで良くて、だんだんわかってくるものだと思います。
マイソン:
最初からビシッとこれじゃなきゃいけないというのではなく、ちょっと気になったらやってみるということですね。阿部さんが俳優になられたのは、高校生の時ですか?
阿部純子さん:
はい。私は学生の時にたまたまやりたいことが見つかったんですけど、それでも両親の薦めでなるべく勉強できる、学べる環境にいなさいということで、いろいろな分野で勉強して、友達もいる学校に行っていました。自分のやりたいことは演技だって思っていましたが、大人になってくると、演技だけじゃなく、いろいろなことに目を向けていたほうが自分の可能性が広がると思いました。なので、今もいろいろなことに興味がありますし、そういう意味でも自分のやりたいことと、何だかよくわからないものの割合を半々くらいに持っているほうが良いのかなと思っています。
マイソン:
俳優さんになりたいと思ったのは何歳の頃だったんですか?
阿部純子さん:
16歳だったと思います。その時は本当に映画が好きで、映画の現場でいろいろな映画を教えてもらって、環境が良くてどんどんハマりました。
マイソン:
これを観て俳優になりたいというきっかけになった作品はありますか?
阿部純子さん:
年齢によってどんどん変わっていって、「あ!」と思った時に映画館に行って良い映画に出会うということもよくあるんですけど、最初は薬師丸ひろ子さんの『翔んだカップル』や『セーラー服と機関銃』などを作った相米慎二監督の作品を観た時です。今もいろいろな作品を観て、いつも「良い映画だな。頑張らなきゃ!」って思います(笑)。
マイソン:
『翔んだカップル』も『セーラー服と機関銃』も懐かしいですね!では、阿部さんにとって良い映画とはどんな映画でしょうか?
阿部純子さん:
記憶に残る映画です。「ちょっと仕事に疲れたな」とか、「楽しいことをしたい」とか、「今日は映画を観たい気分」っていう時にパッと寄った映画館でやっている映画を観た時に、「意外と良いじゃん」って次の日も頑張ろうって思える映画は、人生の隠し味というか、ちょっとしたスパイスを与えてくれる、記憶に残る良い映画なんじゃないかなと思います。
マイソン:
今はコロナ禍で映画館に行きづらいですが、見直すきっかけになることも結構あると思います。映画館で映画を観るのは格別な体験ではありますが、配信で観たりという選択肢が増えた部分はどう思いますか?
阿部純子さん:
より映像が届きやすくなっているという点は良いと思いますし、このコロナ禍でオンラインというものはこれからどんどん進歩していくのかなとも感じるので、そこはどんどんプラスに皆で動かしていけたら良いだろうなと思います。そんなに簡単なものではないのかもしれないですけど。
マイソン:
良いほうに向くとよいですよね。では最後にいち観客として、今までで特に影響を受けた映画か、俳優、監督などはいますか?
阿部純子さん:
邦画と洋画どちらが良いですか?
マイソン:
じゃあ邦画でお願いします!
阿部純子さん:
邦画だとやっぱり小津安二郎とかカッコつけたらどうだろうな(笑)。
一同:
ハハハハハ!
マイソン:
良いと思います!
阿部純子さん:
じゃあ小津安二郎の『東京物語』です。すごく好きで、根底にあるものは家族です。家族の風景って今も変わらないと思っていて、古いものでも新しいというか、永遠に新しいんだなっていうのがすごく心に残っています。
マイソン:
ありがとうございました!
2020年10月13日取材 PHOTO&TEXT by Myson
『461個のおべんとう』
2020年11月6日(金)より全国公開
監督:兼重淳
出演:井ノ原快彦、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.) 森 七菜、若林時英、工藤 遥、阿部純子、野間口徹、映美くらら、KREVA、やついいちろう、坂井真紀、倍賞千恵子
配給:東映
長年連れ添った妻との別れを決意した一樹は、15歳の多感な時期を迎えた息子、虹輝と2人で暮らすことになる。その頃、虹輝は高校受験に失敗。一樹は虹輝に自由に好きなように育ってくれたら良いとだけ思っていたが、虹輝は「高校に行きたい」と宣言する。そして、2回目のトライで高校に入学した虹輝に、一樹は毎日お弁当を作ることを約束し…。
© 2020「461個のおべんとう」製作委員会