子どもができても父としての自覚が湧いていない様子の主人公たすくは、大晦日に行われる毎年恒例の伝統行事「ナマハゲ」に参加し、酒を飲み過ぎて、ある騒動を起こしてしまいます。本作は、妻から愛想を尽かされ、地域の人にも顔向けができなくなったたすくが、この後どんな日々を送り、成長できるのかどうかを映し出しています。本作のテーマの1つは父性ですが、子どもができたからといってすぐに親になれるかどうかわからないのは、男女ともに同じこと。頭ではわかっていても、子どもができたという事実に中身が追いつかない人もいると思います。それを、どちらの視点で観るかは人それぞれで、たすくに感情移入しながら観るのもアリですし、妻のことねや、たすくの母など、周囲の人々に感情移入して観るのもアリだと思います。
ただ、子どもはどんどん大人になっていくし、一生を共にしようと誓った相手がいつまでも待ってくれるとは限りません。人の人生は他の人と繋がりながらも、それぞれに進行しているからこそ一筋縄ではいかない。そういった現実も噛みしめながら、何が人を成長させるのかを客観的に観られる人間ドラマとしても楽しめます。女性目線でもいろいろな意見が出るストーリーだと思いますが、観終わったら、夫やパートナーの愚痴を言いたくなる人もいるかもしれないので、友達を誘うと良さそうです(笑)。
男性は特に肩身が狭くなるストーリーなので、良いムードで過ごしたいデートには不向きだと思いますが、結婚を意識しているカップルは、子どもができてからのことなどを相談するきっかけに観るのもアリかもしれません。一方的に男性を責めるというのではなく、男性にも男性の言い分があって、女性には女性の言い分があるはずなので、お互いの理解を深めるために、鑑賞後はいろいろなシーンを振り返って、それぞれ意見を述べ合ってみてはどうでしょうか?
親になるのって簡単じゃないという部分が描かれたストーリーで、子ども目線で観るとどう見えるのか、大人としては聞いてみたいところですが、キッズの皆さんはまだキャラクターに共感するといったスタンスで観るのは難しいでしょう。主人公とその妻はまだ若いので、高校生なら少し先の未来としてシミュレーションできると思います。まだ子どもを持つということまでリアルに想像できない人も多いと思いますが、子ども目線で観るのもアリだと思います。
『泣く子はいねぇが』
2020年11月20日より全国公開
バンダイナムコアーツ、スターサンズ
公式サイト
©2020「泣く子はいねぇが」製作委員会
TEXT by Myson