本作の主人公は、イスラエル系の母とパレスチナ系の父を持つ、ブルックリン出身の少年エイブ。彼は文化や宗教の違いで対立する家族に悩んでいて、料理を作ることが唯一の心の拠りどころとなっています。そんなある日、世界各地の味を掛け合わせた“フュージョン料理”を作るブラジル人シェフのチコと出会います。エイブは、フュージョン料理を自身の複雑な背景と重ね合わせ、自分にしか作れない料理で家族を1つにしようと考えます。エイブ自身は家族皆を愛しているのに、両親や祖父母が文化や宗教問題で対立している姿は、大人目線だとすごく心苦しく感じます。でも、そんなぎくしゃくした大人達を仲良くさせるためにエイブが料理を頑張る姿にはほっこりしますし、応援の気持ちでいっぱいになります。 日本にフュージョン料理の専門店がどのくらいあるのかわかりませんが、エイブの料理の師匠となるチコの料理はどれも美味しそうで、フュージョン料理自体にも興味がわく方が多いのではないでしょうか。また、本作の料理行程の映像も魅力的で、食材を切ったり焼いたりする音、アップに写る包丁捌きなどを観ているとよりお腹が減ってきます(笑)。なので、ぜひ食前に本作を観て、観賞後に美味しい食事をしに行くことをオススメします!
ムードを盛り上げるタイプの作品ではありませんが、美味しそうな料理がたくさん登場するので、観賞後は流れで食事デートにも誘いやすいと思います。また、子どもがいるor将来子どもを持つことを考えている夫婦なら、親の言い合いが子どもの目にどう映るのか疑似体験できます。エイブの両親は決して悪い人達ではありませんが、子どものことを思うあまりに、自分達にとってもエイブにとってもストレスになってしまう悪循環に陥ってしまいます。もし自分達がエイブの親だったらどうこの問題を対処するのか、これを機に相手と意見交換してみるのも良いと思います。
PG-12なのでキッズも保護者同伴なら観られますが、エイブがお酒を試飲するシーンがあるので、それは真似しないようにしてくださいね。ティーンの場合は、エイブと同世代なので、家族への思いや大好きな料理との向き合い方など、共感できるポイントもきっと多いはず。何かやりたいことがある人なら背中を押してもらえると思いますし、もし本作で料理に興味を持ったら、レシピを調べてできる範囲でチャレンジしてみるのもアリです。
『エイブのキッチンストーリー』
2020年11月20日より全国公開
PG-12
ポニーキャニオン
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TEXT by Shamy
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