目指すものがあったらあったで、そこに近づけない自分に悶々とする人がいる。一方で、エネルギーもあって、光を放っているように見えて、それは自分に迫る影を追い払うためである人もいる。そういう部分に蓋をして生きることができない不器用な人は、もがいてもがいてもがいても、自分ではどうにもならなくて、力尽きそうになって、大声で心から叫びたくなる。そんなグチャグチャな人間の内側を映像で表現した作品です。社会に放り出されて、その厳しさを知り、自分の小ささ、無力さを知り、それでも這い上がり生き延びるのはとてもしんどいことです。そしてこれは、年齢を問わず、長く“青春時代”を送っている人には常につきまとう心情だと思います。でも、見方を変えると、こういう気持ちを持てている自分は、まだ青春時代を生きているのだということではないかと気付かされます。切ないストーリーではありますが、闘志を奮い立たせてくれる作品。本作を観て、いろいろな感情を掘り起こして、グチャグチャな思いをパワーに変えてください。
恋愛要素はありつつ、苦い展開のほうが印象に残ります。ただ、不器用なキャラクター達は皆それぞれに優しさがあって、こういう感覚が共有できるかどうかで、相性がわかる部分もありそうです。そばにいてくれる誰かの存在を尊く思えるストーリーなので、観終わった後はお互いに優しくなれるかもしれません。
負け組のように見えて、芯では輝いている、そんなキャラクター達に共感を持ってくれる人も多いと思います。ティーンの皆さんは家庭のことや進路のことで、いろいろな悩みを抱えていると思いますが、主人公達の姿を観て、等身大で感情移入できるでしょう。また、友達の大切さや今一緒に過ごしている何気ない日々が今後どんなに勇気をくれるかということにも、思いを馳せて観てもらえればと思います。
『佐々木、イン、マイマイン』
2020年11月27日より全国公開
パルコ
公式サイト
© 「佐々木、イン、マイマイン」
TEXT by Myson