2人の息子を連れて家を出たクララ(ゾーイ・カザン)、仕事に忙殺されて自分の人生について考える暇もない看護師のアリス(アンドレア・ライズボロー)、やっと仕事に就けても失敗ばかりでクビになるジェフ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)、刑務所から出所したばかりのマーク(タハール・ラヒム)など、さまざまな問題、悩みを抱えた人々が、ひょんな出会いから少しずつ新しい人生を見出していく群像劇。邦題の一部に“親切なロシア料理店”とあるので、レストランを舞台に美味しい料理で人が癒される話かと思いきや、そうではないところで逆に味があるストーリーとなっています。またビル・ナイが演じるレストランのオーナーは人々に手を差し伸べながらも控えめで、懐の深さとユーモアで彼らを包み込みます。
ニューヨークの何気ない日々を描いているように見えて、1つハラハラする展開も同時進行していて、その背景にある問題を解決しようと皆が奔走するなかで、自分を見つめ直し、新しい人生に一歩踏み出す勇気を得ていきます。人生を変えるのは容易なことではありませんが、追い詰められた時こそ見えるものがあるのかもしれません。助けられたほうはもちろん、助けたほうの人生も大きく変わるという、人と人との交流の素晴らしさを教えてくれる作品です。
とても温かいストーリーですが、カップルの事情によっては、それぞれに別の感情が芽生える可能性があります。ネタバレになるので詳細は伏せますが、自分達の関係に不穏な空気が流れている状況なら、1人で観るか、友達と観るほうが良いでしょう。ロマンチックなラブストーリーも含まれるので、平和に付き合っているカップルはデートで観るのも良いでしょう。
キッズとティーンのキャラクターも登場するので、彼らと同じ目線で観ることができると思います。世の中には悪い大人もいるけれど、見知らぬ人でも助けるような大人もいることがわかります。どんな風にそれを見分ければ良いか考えながら観るのも良いですし、その場その場で自分ならどんな選択をするか考えながら観ると、自ずと皆さんの価値観も見えてくるかもしれません。
『ニューヨーク 親切なロシア料理店』
2020年12月11日より全国順次公開
セテラ・インターナショナル
公式サイト
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TEXT by Myson