今や世界190カ国以上で事業展開し、有料契約者数は1億8300万人(2020年 第1四半期)、2020年のコンテンツ投資額は1兆5000億円を投じるまでに成長したNETFLIX(ネットフリックス)。でも当然ながらずっと順調だったわけではなく、NETFLIXはここまで成長するために紆余曲折を経てきました。その経緯が本作で明かされており、NETFLIXだけでなく、アメリカの映像コンテンツ業界がどんな変遷を辿ってきたかが見えるドキュメンタリーとなっています。
NETFLIXは今ではオンライン配信サービスを行う大手企業として知られていますが、もともとはオンラインDVD配送レンタルサービスを世界で初めて提供する会社として1997年に設立されました。同じ頃DVDレンタル店の巨大チェーンを全米で展開し勢力を誇っていたのはBlockbuster社。そこで両社の運命が複雑に絡み合うわけですが、どうやってNETFLIXがBlockbusterを陵駕していったのかが、本作を観るとわかります。NETFLIXは、ピンチを迎える度にそれを克服するための新しいアイデアを試して、何度もチャンスに変えていきますが、その展開が何ともドラマチック。ここで熾烈なビジネスバトルが繰り広げられたわけですが、ビジネスにはいかに先見の明が必要になるかを目の当たりにします。よくぞここまで過去を曝露したなと思えるほど、両社の当時の関係者もいろいろなことを振り返りながら話すので、本当に貴重な話が聞けますよ。そして、本作を観てしまうとNETFLIXをますます好きになってしまうはず。なぜなら、彼等のチャレンジ精神や負けない姿勢こそまさに映画的だからです。
NETFLIXが映画製作にも乗り出したことで、映画業界の勢力図も変化しつつありますが、映画ファンはもちろん、経営者やビジネスパーソンも必見です。
日本でのNETFLIXの知名度もだいぶ上がったので、企業自体に興味を持つ人も多くいるでしょう。ドキュメンタリーというと堅いイメージを持つ人もいるかもしれませんが、レンタルDVD盛況の時代からデジタル配信の時代への変化を目の当たりにしている現代人にとっては、誰もが馴染みのある内容です。またNETFLIXの成長の過程にはドラマチックな展開が満載なので、観ていて飽きません。老若男女問わず観やすいので、初デートで観るのもアリだと思います。ただ蘊蓄好きな人は、鑑賞後の会話で度が過ぎて相手を引かせないように注意しましょう。
ビジネスの仕組みの話が満載なので、キッズにはまだ難しいでしょう。中学生くらいになるとだんだんわかってくると思うので、経済や商業の勉強の一環として観るとおもしろいです。キッズやティーンの皆さんの世代は、レンタルDVDを利用したことがない人のほうが多いと思いますが、だからこそ逆に新鮮に見えるところもあると思います。アイデア1つでこんなに世界が変わるのを知ると、将来の夢も広がるのではないでしょうか。
『NETFLIX/世界征服の野望』
2020年12月11日より全国公開
知的好奇心の扉「TOCANA」
公式サイト
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TEXT by Myson