実写版は2003年公開だったとのことで、もう17年も経ったんですね。どうりで私はだいぶ内容を忘れていました。本作はアニメーションということもあって、実写版を観た人も一層新鮮に観られると思います。主演の声を務めるのは、中川大志と清原果耶。2人とも良い意味で俳優本人の影を感じさせることなく、声優として好演しています。特に清原果耶は実年齢よりもだいぶ年上のキャラクターの声を演じていますが、ジョゼの貫禄とキュートさをうまく表現しています。原作者の田辺聖子氏は1928年生まれ(享年91歳)とのことですが、長く愛される作品にはやはり時代を問わない普遍的なテーマが描かれているんだなと実感させられます。
障がいを持って生きるということはどういうものなのかを描くストーリーは、そういったことに無縁だと思っている人々にも痛烈にイメージできるように構成されていて、ジョゼの思いに少しでも近づくことで、見えていないものをたくさん見せてくれます。また生きていく上で何かに挑戦するかしないかは、気持ちや決意で決まるのだということも教えてくれます。
ジョゼと鈴川恒夫の関係はひょんなことから始まるので、2人はしばらく一定の距離感をもって接していきます。ジョゼはなかなかの灰汁の強さを持っているので、こじらせ女子は自分のことを客観視するのに良いお手本となるでしょう。また、やる時はやるということで、愛情いっぱいの行動を起こす場面には共感することを間違いなしです。素直になれずに友達以上恋人未満から抜け出せない人はぜひ一緒に観てください。
大学生の鈴川恒夫はやりたいことを見つけて、それを実現するお金を貯めるためにアルバイトを掛け持ちしています。ティーンの皆さんにとって身近にいそうなキャラクターが主人公なので、進路のことや恋愛のこと、友達のことなど、親近感を持って観られると思います。一方車椅子生活のジョゼは狭い世界で生きていたため、外の世界を怖いと感じています。でも、恒夫との出会いがきっかけでどんどん世界を広げていきます。チャレンジするのは怖いと思えることがありますが、ジョゼや恒夫の奮闘を観ると勇気をもらえるはずです。
『ジョゼと虎と魚たち』
2020年12月25日より全国公開
松竹、KADOKAWA
公式サイト
©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project
TEXT by Myson