本作は実際にイタリアで起きた詐欺事件から着想を得て作られた物語で、その事件の内容にも驚きますが、そういった現実をキリスト教の“ラザロ復活”のエピソードと絡めているという点でとても独創的です。舞台となっている時代がいつなのかがわからないほど、社会から隔離されていると思われる田舎の村で、貧しい生活を送る人々とラザロ。前半は彼らが毎日細々と暮らしている様子が描かれています。キリスト教のラザロについて知っている方なら展開を少し予想できる部分もあるかも知れませんが、私の場合は知らずに観たので、途中ラザロに起こったありえない出来事を観て唖然。そこからどうなるかは映画を観て頂くとして、後半はジャンルが変わったとも言える内容になっており、なお観る者の心を引き込んでいきます。ホッと胸をなで下ろす展開もありつつ、最後は何とも言えない後味を残す作品。無垢であることは清いことなのか、それともただ無防備であることなのか…。人間の汚れた部分を肯定するわけではありませんが、淘汰されていく側、生き残る側という、受け入れがたい現実的な一面を突きつけられる結末が数日余韻を残します。そして、ラザロ役にどハマりのアドリアーノ・タルディオーロにも注目してください!
映像は静かに流れていくのに、内容はとても生々しく、野生的で、残酷。良い雰囲気にさせてくれるストーリーとは言い難く、観終わった後に心が撃沈する可能性があるので、デートにはあまりオススメしません。ただ映画好き同士なら、語りたくなるストーリーではあるので、一緒に観るのに慣れているならアリだと思います。
セリフでは多くを語ってはいませんが、肌で感じる部分は大いにあると思います。ただキッズにはまだ理解が難しいかも知れません。でも、無垢な部分がまだ大いにある若い皆さんが観たらどう感じるのかぜひ感想を聞いてみたい作品ではあります。見た目の起伏はあまりありませんが、心を動かされる展開は何度もあるので、中学生以上の人は、興味があれば観てみてください。
『幸福なラザロ』
2019年4月19日より全国順次公開
キノフィルムズ、木下グループ
公式サイト
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TEXT by Myson