心臓に爆弾を埋め込まれ、任務から逃げられない運命にある主人公の奮闘を描いた本作は、劇場映画とWOWOWのドラマとで構成されています。監督は“海猿”シリーズや、本作と同様WOWOWが手掛けたドラマと劇場映画で構成された“MOZU”シリーズを手掛けた羽住英一郎。物語の時系列としては、ドラマのエピソードの後に劇場版のエピソードが繋がるといった順番のようですが、まずは劇場版だけ観てみるというのでも十分話にはついていけます。主人公は藤原竜也が演じる鷹野一彦。彼は国や企業などの機密情報を入手し売買するAN通信のエージェントで、24時間毎に本部に連絡しなければ爆発する爆弾を心臓に埋め込まれています。本作では彼が相棒の田岡亮一(竹内涼真)と共に、危険な任務に挑んでいく姿が映し出されると共に、なぜ鷹野がエージェントになったのかが描かれています。鷹野の過去と任務は無関係に見えますが、鷹野の行動や言葉のルーツが過去に紐づいていることが徐々にわかってくる後半では、人間ドラマの部分も盛り上がり、周囲のキャラクターへの興味も膨らみます。
本作は海外を舞台に展開する場面もあり、キャストもグローバルです。そして、本作は何といってもアクションが見どころ。壮大なスケールのアクションシーンはブルガリアで撮影され、日本では撮影不可能なシーンが実現したそうです。監督はアクションシーンは吹き替えなしで全編撮りたいとリクエストしたそうですが、藤原竜也、竹内涼真がどんな形で応えたかぜひ本編を観て確かめてください。あと、ふいに出てくるセクシーなシャワーシーンはスパイ映画あるある的な描写で思わずニンマリしてしまいますが、良い意味でお約束的なシーンを「待ってました!」とばかりに楽しむのもオススメです。
ラブストーリーはサブ的な要素ではありますが、鍵を握っているとも言えて、共感できる部分もあります。ただ特殊な世界を描いているだけに、自分達に置きかえて観るということはなさそうなので、カップルで観て気まずいこともありません。映像的にも展開的にも派手でエンタテインメント作品として観やすいので、年齢層なども問わずデートで観るのもアリでしょう。ただ、内容的にバイオレンスシーンは付きものなので、相手がそういう描写があっても大丈夫かどうかは配慮したほうが良さそうです。
主人公の少年時代も描かれるので、キッズやティーンの皆さんも親近感を持って観られると思います。複数の組織の思惑が絡み合うので、小学生には少し難しく感じるかもしれませんが、中高生以上なら問題なくついていけると思います。常に時間との戦いも強いられるので、テンポも良く、緊張感を保ちながら観られるでしょう。大変な思いばかりする毎日のなかで、主人公がどんな思いで一日いちにちを過ごしているのかというメッセージにも耳を傾けてみると、私達の日常に繋がる部分もきっと見つかりますよ。
『太陽は動かない』
2021年3月5日より全国公開
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
©吉田修一/幻冬舎 ©2020「太陽は動かない」製作委員会
TEXT by Myson
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