1998年、長野オリンピックのスキージャンプ団体で日本が金メダルを受賞したことは記憶にある方もいらっしゃいますよね。私もそのことは記憶にありましたが、まさか裏側にこんなドラマがあったとは知らず、実話を基にした本作を観て本当に驚いたと同時に、再び感動を味わわせていただきました。皆さんにも映画を観て知っていただきたいのでここでは具体的に書きませんが、本作の主人公は、競技の裏方として活躍するテストジャンパー達です。
田中圭が演じる西方仁也選手は、1994年のリレハンメルオリンピックで原田雅彦選手(濱津隆之)と同じく代表選手として出場した1人。そんな一流選手の彼がなぜ長野オリンピックではテストジャンパーとなったのかというところから物語は始まるのですが、選手人生がいかに険しく厳しいものなのかが伝わってきます。そしてそこには、仲間でありライバルである選手同士の複雑な関係性も描かれていて、西方選手の葛藤、原田選手の苦悩、他のオリンピック選手やテストジャンパー達の思いが、観る者の胸に響きます。
スポーツって選手や関係者達がこうして見えないところで並々ならぬ努力をしているからこそ、観る者に感動を与えるんだなと改めて実感させられるのはもちろん、この物語を私達の日常に置きかえて考えることもできて、前に立つ人には他にはわからない辛さがあるし、裏方として支える人達の中にもさまざまな思いがあって、役割に関わらずすべての人の存在の大きさに気付かされる物語となっています。本作が劇場公開される2021年6月は、コロナ禍の日本でオリンピックが開催されるか否かの議論の最中ですが、オリンピックやスポーツの本来の意義は何なのかを改めて思い出させてくれる作品だと思います。
西方選手夫妻の物語も印象的に描かれていて、パートナーや家族の存在の大きさを実感できるストーリーとなっています。本作はぜひ本命の相手と観て、今の仕事のことや将来のことなど、いろいろと話すきっかけにしてください。涙腺が刺激されるシーンも多いので、ハンカチをお忘れなく。また、泣いちゃってもお互い恥ずかしがらずに、いつもは見えない一面を見られたと喜びましょう(笑)。
キッズにもティーンにも観て欲しい1作です。スポーツに限らず、ライバルであり仲間である人物がいることはとても貴重です。時に離れたり、ぶつかる時もあるかもしれませんが、お互いに成長する上でとても大きな存在であることが、本作を観るとわかると思います。そして悔しい気持ちを体験するのも大事だし、それはどんな立場であっても同じです。たくさんのキャラクターが登場するので、自分が共感できる人物を見つけて、何かに打ち込む人の熱い思いを体感してください。
『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』
2021年6月18日より全国公開
東宝
公式サイト
© 2021映画『ヒノマルソウル』製作委員会
TEXT by Myson