本作は、7年前に理不尽な交通事故により夫を亡くした母と息子の物語。144分と長めの作品ではありますが、とても見応え抜群で、あっという間に時間が経ってしまいます。尾野真千子が演じる主人公の良子は、残された息子と共に何とか生きようとするも、社会的なルールと、それを言い訳にする心ない人達により、なかなか事が思うように進みません。そんな様子を観ていると、ものすごくもどかしさを感じますが、「会社のルールなので」とか「当たり前でしょ」などと、何かを押し付けられることは、現実社会でもあり得ることだと思います。社会のルールをすぐに変えることは難しいかもしれませんが、この親子がどのように社会の理不尽さと対峙していくのかを観届けることで、何かご自身の中でも答えが見つかるかもしれません。
そして、母の良子役を演じた尾野真千子はもちろん、息子の純平役を演じた和田庵の演技力が物語に一層説得力を与えています。さらに片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏、鶴見辰吾、嶋田久作といった脇を支えるキャストも豪華なので、それぞれどんなキャラクターとして登場するのかにも注目です 。
デートのムードを盛り上げる作品ではありませんが、映画好きや付き合いの長いカップルには観て欲しいと思います。良子はさまざまなストレスに対して、我慢をして怒りをぶつけずに過ごしています。彼女のストレスの行方は本編をご覧いただくとして、彼女のようにストレスを溜め過ぎないよう、これを機に日頃の不満をお互いに聞いてみてはいかがでしょうか。
R-15+なので、15歳未満の方は観られません。15歳以上のティーンは、息子の純平と同じ視点で観られます。彼が学校で置かれている状況や、母と息子の関係性に注目することで、ご自身の周囲の人々との関係性を見直すきっかけにもなりそうです。
『茜色に焼かれる』
2021年5月21日より全国公開
R-15+
フィルムランド
公式サイト
© 2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ
TEXT by Shamy