本作は歴史の一説を基に、ハングル語の成り立ちについて描いたフィクションです。私達は普段当たり前のように文字を使っていますが、本作を観ると文字は意志の疎通をするための道具としてだけではなく、国政にとってもいかに影響力が大きいかを実感できます。
物語の舞台は朝鮮第4代国王、世宗の時代で、この時はまだ朝鮮には自国語を書き表す文字が存在していませんでした。上流階級層だけが特権として中国の漢字を学び使っていましたが、その背景には中国の支配、宗教、国政が絡んでいることが、ストーリーの中で示されていきます。ここで儒教と仏教というキーワードが出てきて、それぞれのルーツに文字が深い関わりを持っていることを知ることができると同時に、なぜ一般庶民に文字を学ばせようとしてこなかったのか、なぜ漢字だけを使おうとしているのかということの背景に権力を保ちたい人達の思惑があることもわかってきます。
本当に文字って奥が深いなとしみじみ感じられて、文字ってこうやって作られていくんだなという行程も観られることで文字の有り難みや重みも伝わってくる内容です。そして、世宗が自分の立場が危うくなりながらも自国の文字を作ろうとする姿に共感し、人間臭い僧侶達の姿は時にユーモラスに描かれていて、お国は違えど、親近感を持ちながら観ることができると思います。『殺人の追憶』のソン・ガンホとパク・ヘイルの共演も映画好きにとっては嬉しい見どころで、実力派俳優の演技が堪能できます。東洋の歴史が好きな方はもちろん、韓国映画好き、語学好きにもオススメの一作です。
世宗と王妃の関係も物語の鍵となっていて、リスクの大きなことに取り組む際にパートナーの支えがいかに大切かがわかります。やりたいことがあるのにやれないでいる方、パートナーにそのことを言えないままでいる方は、ぜひ本作を一緒に鑑賞して、挑戦への一歩を踏み出してください。
今皆さんは勉強として語学をやらされている感が大きいかもしれませんが、その成り立ちや背景を知ると、文字や言葉を学ぶことがいかに尊いことかがわかると思います。それと同時に文字っておもしろいと思えれば、ハングル語に限らず、いろいろな言葉のルーツなどを調べることで、勉強させられている感覚がなく自然にその言葉が身につけられると思います。文字を読めることは力を持つことであるというのもわかる内容なので、今やっている勉強も無駄ではないと思えるはずです。
『王の願い ハングルの始まり』
2021年6月25日より全国順次公開
ハーク
公式サイト
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TEXT by Myson