物語の舞台は1995年の韓国。当時の韓国は金泳三大統領によってグローバル元年とされ、語学学校が流行していたといいます。本作でも学歴社会、人事におけるTOEIC採用などの社会情勢がストーリーにも反映されており、実話をベースとした逆転劇が展開されます。劇中で高卒の女性社員達は制服に身を包み、コーヒーを入れたり書類を整理したり雑用をメインに担当しています。会社の問題点に気付いたり、良いアイデアを思いついても相手にされることは稀で、性別と学歴でここまで立場を限定されるのかと改めて実感させられます。今どれくらいそういった状況が改善されているのかわかりませんが、日本にいる私達も他人事としては観られない情景が本作には広がっています。
また、性差別や学歴社会による格差だけでなく、大企業の隠蔽工作という大きな問題も扱われています。公式サイトによると、その部分は1991年に起きた、斗山電子のフェノール流出による水質汚染事件がモデルとなっているとのことで、汚染地区の住民達の緊迫した姿が印象的に描かれています。女性社員達のワチャワチャした感じやOLの日常シーンは女性ならとても共感できると同時に、事件解決に奔走するシーンはシリアスに描かれていてメリハリも効いています。本作がおもしろいのは主人公達がこの問題に立ち向かうと同時に、それが最終的に女性の立場の向上にも繋がっている点であり、現状を受け入れつつもそれぞれの夢を諦めずに態度と行動で実力を示す彼女達の姿がとても清々しくカッコ良く映し出されている点です。伏線もとても巧みに張り巡らされているので冒頭から細かいところに目を配りながら観て欲しい1作です。
ロマンチックなムードになるようなストーリーではないし、思いっきりお仕事映画なので、特に会社勤めの皆さんは映画が始まると自分の職場のことなどが脳をよぎって、デートの雰囲気を味わう感じではなくなるかもしれません。でも、もし今自分がいる会社に疑問を持っていたり、仕事のことで悩んでいたら、これを機にパートナーに悩みを切り出しやすくなると思います。たまにはお互いの仕事の話もしたいというカップルは一緒に本作を観てみてはどうでしょうか。
キッズの皆さんにはまだピンとこないところもあるかもしれませんが、内容はシンプルなので小学校高学年以上ならストーリーには充分ついていけると思います。職場見学、社会見学の感覚で観られるポイントがたくさんあるので、会社員として働くとどんな感じなのかイメージの1つとして参考にできるでしょう。少しずつ時代は変わってきていますが、まだまだ日本も本作に描かれているような状況が残っていると思います。そういう社会情勢を踏まえて、自分はどんなところでどんな働き方をしたいか、本作を観てイメージしてみてください。
『サムジンカンパニー1995』
2021年7月9日より全国順次公開
ツイン
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TEXT by Myson