ネタバレ注意!
ずっと独身でいるつもり?
ライターの本田まみ(田中みな実)は以前執筆したエッセイで自立した女性の本音を書き人気を得たが、それ以来ヒット作を書けず10年が経っていた。まみは36歳になり周囲も結婚しないのかと迫るなか、配信番組の出演をきっかけに心が揺らいでいく。
タイトルにもある通り、本作は結婚がテーマの1つとなっています。同時に世代が異なるキャラクターが登場することで、年を経ていく過程で女性がどんな選択をしていくのかが描かれています。主人公のまみが自立した女性の本音を書いたベストセラーを出したのは26歳。いち女性として客観的に見ると、まだまだ若い彼女には気持ちに余裕があっただろうし、未来に可能性をいっぱい感じて結婚を意識することも少なかったと思います。でも、時代が変わってきたように見えて、やっぱり今でも30歳を超えると結婚する友人も増えてきて、なぜか焦ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。
私自身の経験を振り返っても、30歳に近づくにつれ周囲からの「いつ結婚するの?」オーラは強くなったと思います。相手がいなければ紹介しようかというお節介が増えるし、いたらいたで「いつ?」「まだ?」と聞かれる。私の場合、東京の友人や知人はいろいろなライフスタイルの方が多いせいかプレッシャーをかけられていると感じることはあまりありませんでしたが、地元に戻ると友人に既婚者が増えていたこともあり、自分で勝手にそういうプレッシャーを感じてしまっていた部分もあったと思います。でも、そのプレッシャーは30代後半になると気のせいではなくもっと露骨になり、当時既に今の夫と長年交際中だったこともあり多くの方に「なぜ結婚しないの?」と聞かれることに疲れていました。内心「私達のタイミングでするからほっといて」と思っていましたが(苦笑)、なぜか結婚に関する質問については、デリカシーを気にしない風潮が未だにあるように感じます。
20代後半から30代というと責任ある仕事を任されておもしろくなってくる時期。だから仕事か結婚かみたいな選択を迫られると、仕事を続けたい方にとってはもう絶望的です。今は共働き夫婦も増えてきたので新婚のうちは仕事を続けられるだろうと思いますが、本作のなかでまみに対する婚約者やその両親の勝手な未来予想図を知ると、結婚することで女性が犠牲にするものは大きいなと実感します。男性ももちろん結婚することで背負わされるものが大きいとは思いますが、未だに結婚には必ず子を産んで育てるというルートが紐付けられており、女性は出産に伴う休職は避けられず、かつ子育ては女性が主体でやるものという価値観が流布している点で、どうしても女性のほうが結婚によって縛られる部分があるように感じます。
これは相手に寄るところがとても大きいので、理解ある方と結婚するならば一概にそうとは言えませんが、結婚する必要があるのかは一度考えても良いと思います。それは一概にその相手と別れるかを考えろという意味ではなく、なぜその人と一緒にいるのか、その人とその先どうなりたいのかというところがお互いにハッキリすれば、自分達が取るべき選択肢が見えてくるように思います。そのためにはまず自分の幸せとは何かを知ることから始めなければいけないはず。本作では、そんな過程をさまざまなキャラクターを通して観ることができます。
この記事を書くには自分の経験も少しお伝えしたほうが良いと思いますが、私も振り返るといろいろ焦ってもがいた時期もありつつ、アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットの関係(結婚せずにパートナーだった時期)を見て、結婚にこだわる必要はないのかもと思ったこともあります(笑)。うちも長らくの事実婚状態を経て結婚しましたが、それが自分達のタイミングだったと思います。結局、いつ結婚しようが、もしくは結婚してもしなくても、自分にとっての結婚とは何かを真剣に考え始めた時に見えてくるものもあると思います。それは本作を観ていても伝わってくると思うので、最初から結婚がアリかナシかではなく、一旦真剣に考えてみるのも1つの手なのかもしれません。
『ずっと独身でいるつもり?』
2021年11月19日より全国公開
公式サイト REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定
© 2021日活
TEXT by Myson