いろんな意味で意外性のある作品。組織から追われる孤独な中年男と、まだあどけなさがあるが、何かを抱えて生きている女。見知らぬ2人がひょんなことから逃避行をすることになり、親子でも兄妹でも、恋人でも友達でもない、独特な距離感で、徐々に心を寄せ合っていきます。物語は淡々としていて、一見地味ですが、最後の最後まで観ると「そうきますか!」というスパイスを効かせた構成になっていて、曖昧ではありながら、その曖昧さが心地良い作品になっています。運命のイタズラと思える伏線もいくつかあり、人の縁とは、それが不幸なのか幸福なのかわからないものだなと思えます。
俳優、スタッフも魅力的で、まずエル・ファニングは相変わらず名演を見せており、色気とあどけなさ、弱さと強さを併せ持つ難しいキャラクターを絶妙に具現化しています。ベン・フォスターも一匹狼的な空気を漂わせながら、どこか人懐っこさを感じさせる魅力的なキャラクターを好演。監督は、フランスを代表する女優メラニー・ロランが務めており、美しい情景描写や、キャラクターの心情にメリハリを持たせたシーンの演出など、センスを感じます。
ロマンチックな要素もありつつ、悲壮感が漂う内容で、ウキウキした気持ちでいたいデートの日や、初デートには向かない内容です。上映時間は94分と短めなので、他の予定も盛り込みたい日や、急に映画を観たくなった夜などに観やすいと思いますが、何度か映画を一緒に観に行ったことのあるカップルにオススメです。
エル・ファニングが演じるキャラクターは、ティーンの皆さんと年齢的には近いですが、ストーリー的には大人向けで、少々ショッキングな要素のある内容なので、高校生以上のほうがより等身大で感情移入して観られると思います。悲しい要素もありますが、微笑ましいシーンや、美しいシーンもあり、ラストも受け止め方が人によって異なりそうなので、自由な視点で観てください。
『ガルヴェストン』
2019年5月17日より全国公開
PG-12
クロックワークス
公式サイト
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TEXT by Myson