ギレルモ・デル・トロ監督作品といえば、クリーチャーが象徴的な存在ということで、本作ではどんなクリーチャーが登場するのかと期待して観る方もいらっしゃるのではないでしょうか。でも、本作のクリーチャーはこれまでの作品とは異なり、見た目ではなく心理的な怖さを感じさせます。これは観る方それぞれの解釈によると思いますが、私個人の解釈では、本作のクリーチャーは比喩的なもので、その正体は結末でようやく明かされたと感じました。クライマックスで薄々「まさか…?」といや〜な予感がしてきて、最後に「やっぱりか!」というシーンがあり、その後さらに残酷な結末が待っています。私は予想が的中した嬉しさ反面、ゾクゾクッと背筋が凍る思いがしました。ブラッドリー・クーパーが演じる主人公が最後に見せる何ともいえない表情の裏にある心情を観る側も体感できます。さすが、ギレルモ・デル・トロ監督!この感覚こそ今作の醍醐味だと思うのでぜひ皆さんも味わってください。
中盤まではロマンチックなラブストーリーを観ているような感覚ですが、後半はガラリとトーンが変わり、物語にどんどん闇が立ちこめてきます。本作ではショービズの世界が舞台になっていて、その中で主人公スタントン・カーライル(ブラッドリー・クーパー)が体得するトリックが物語の鍵となり、彼の運命をも狂わせていきます。後半の展開で彼の歯車がどこから狂ってきているかを予想するおもしろさがあり、油断した頃にドッヒャーという展開が待っています。私は「やっぱりおかしいと思ったんだよね」と思いながらも騙されたところがありました。そんなどんでん返しも楽しんでください。そして、実力派キャストがズラリ揃った点でも映画好きの皆さん必見の作品です。
前半はロマンチック、でも後半にいろいろあるので、観終わった後はロマンチックなムードになるという感じではないと思いますが、いろいろと振り返ってしゃべりたくなるという意味では会話が弾むでしょう。反面教師として観られる部分もあるので、エンタテインメントとして楽しみつつ、カップルとして気を付けたほうが良い点も参考にすると良さそうです。
上映時間が150分と長く、内容も大人向けなので、小学生以下の皆さんにはちょっとハードルが高いかもしれませんが、ティーンの皆さんは興味を持ちそうな要素もあると思います。主人公のスタントンが使う技は人間の心理をついたもので、そのカラクリにも興味を持てるでしょうし、キャラクター同士の駆け引きの中にもいろいろな心理戦が含まれているので、会話を注意深く聞くと一層楽しめますよ。
『ナイトメア・アリー』
2022年3月25日より全国公開
ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式サイト
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TEXT by Myson