原案、脚本、監督を務めるのは、『ミッドナイトスワン』の内田英治。公式資料によると、内田監督がある警察音楽隊のフラッシュモブ映像を観たことをきっかけに本作が生まれたそうです。物語の冒頭では、お年寄りが狙われるアポ電強盗事件の捜査をする刑事、成瀬(阿部寛)のピリピリとした姿が映されていて、そんな彼に、突然音楽隊への異動が言い渡されます。現場一筋の成瀬が音楽隊に異動し、彼自身の心境や周囲の人々との関係がどう変化していくのかが本作の見どころです。
音楽隊に入り、事件の捜査から離れてしまう成瀬の複雑な心境を阿部寛が上手く体現していて、武骨だけどどこか憎めないキャラクターに昇華しています。また、阿部寛は本作でドラムに初挑戦しており、見事なスティックさばきも観られるので注目です。その他にも、清野菜名、磯村勇斗、高杉真宙、見上愛、倍賞美津子らが共演し、それぞれ重要人物を演じています。特に倍賞美津子が演じた認知症の母親はとてもチャーミングで印象に残ります。でも、その一方で家族が苦労する場面も映されているので、同じように認知症の家族を持つ方なら共感できる部分がありそうです。
音楽、クライムサスペンス、人間ドラマが上手く絡み合った見応えある作品で、老若男女問わず楽しめると思います。観る人によって心に響く部分が変わりそうなので、鑑賞後はいろいろな人の感想を聞いてみるのもオススメです。
恋のムードを盛り上げる要素はないものの、気まずくなるシーンはないので、初デートや付き合いたてのカップルでも観やすい作品です。主人公を中心とした職場や家族のさまざまな人間模様が観られるので、これを機にお互いの人間関係について話してみるのも良いと思います。
皆さんの視点から成瀬の姿を見ると、最初は「古くさいおじさん」だと感じると思います(笑)。でも、そんな彼が不器用ながらも少しずつ変わっていく姿は、とてもカッコ良いので、最後まで温かく見守ってください。また、警察に音楽隊があることを本作で知る方も多いのではないでしょうか。もし興味を持ったら、実際の警察音楽隊の演奏を聴きに行ってみるのもアリです。
『異動辞令は音楽隊!』
2022年8月26日より全国公開
ギャガ
公式サイト
©2022 『異動辞令は音楽隊!』製作委員会
TEXT by Shamy