この物語は、主人公のアン・ラン(チャン・ツィフォン)がある日突然両親を交通事故で亡くすところから始まります。アン・ランは早くに親元を離れ、医者になるため自力で北京の大学院進学を目指していました。でも、両親を亡くした時にアン・ランは初めて年の離れた幼い弟アン・ズーハン(ダレン・キム)に出会い、やむなく弟の面倒を見ることに。ただ、アン・ランは両親に対して複雑な思いを抱えていて、北京へ行く夢も諦められず、難しい選択を迫られます。
ここまでのあらすじを読んでいただくと、「ずっと疎遠だった家族があることをきっかけに出会い、心を通わせていく話なんでしょ?」と想像する方も多いと思います。でも、本作はそんな単純なストーリーではありません。アン・ランはやたらと弟に冷たい態度を取るし、両親との関係もなぜ冷え切っていたのか謎めいたシーンが織り交ぜられています。また、アン・ランの周囲で起こる出来事にもひっかかるシーンがあり、観ていくと中国で1979年から2015年まで実施されていた“一人っ子政策”が関係していることがわかってきます。
“一人っ子政策”とは、急激な人口増加を抑えるために中国政府が施した政策で、文字どおり夫婦1組に子ども1人と制限されていました。本作は“一人っ子政策”が国民にどんな影響をもたらしたのかを描いています。そこには性差別も深く絡んでいて、現代の話とは思えない部分も感じられます。だからこそ、アン・ランがどんな選択をするのかはとても重要で、特に女性はいろいろな感情を掻き立てられると思います。同時に家族の大切さも描いていて、観る側に人生観を問う内容となっています。観終わった後は、いろいろな方の感想を聞きたくなる作品です。
本作ではアン・ランの恋愛も描かれています。相手の家柄や相手の価値観もアン・ランの選択に大きく関わってきます。アン・ランは大きな選択をしなければならない時だからこそ、優先順位をつけざるをえません。進学、就職、結婚など節目で恋愛の悩みを抱えている方は、1人でじっくり観て、自分の心と向き合う機会にするのが良さそうです。
社会科の授業で中国の“一人っ子政策”について学んだ方は、実際に中国ではどんな影響が出ていたかを本作で知ると、一層頭に残って勉強にもなると思います。主人公のアン・ランは大学生なので、ティーンの皆さんは近い目線で物語に没入できるでしょう。自分がアン・ランのようなシチュエーションにならないとしても、自分ならどうするか考えながら観ると、自分の価値観が少し明確になるのではないでしょうか。
『シスター 夏のわかれ道』
2022年11月25日より全国公開
松竹
公式サイト
© 2021 Shanghai Lian Ray Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved
TEXT by Myson