数々の個性的な作品を輩出し期待を集めるA24が手掛ける本作は、作者不明の「サー・ガーウェインと緑の騎士」を原典としています。原典は14世紀に詠まれたアーサー王にまつわる物語で、言語学者であり「指輪物語」で知られるJ・R・R・トールキンが翻訳し出版したことで広く読まれるようになったといわれています(映画公式資料より)。
主人公は、アーサー王の甥であるサー・ガウェイン(デヴ・パテル)。彼は自堕落な生活を送っていましたが、あるクリスマスの日、アーサー王が開いた宴に突如現れた奇妙な姿の緑の騎士の恐ろしい“遊び事”に応じます。その“遊び事”はその場では終わらず、緑の騎士は1年後にある約束を果たすよう言い残しその場を去ります。さて、サー・ガウェインは1年後、その約束を果たせるのだろうかというのが本作の物語です。
本作には比喩的な表現が多く出てくるので、どんな意味が隠されているのか考えながら観るおもしろさがあります。また、哲学的なセリフも多く、セリフの一つひとつを注意深く聞きながら観て欲しい作品です。クリスマスになぞらえて、緑と赤が何を象徴しているのかというのも鍵となっていて、なぜ“グリーン・ナイト=緑の騎士”なのかというところも自分なりの解釈を交えながら観ると一層楽しめます。さらに、緑の騎士が持ちかけた恐ろしい“遊び事”が意味するところは何なのかが最大のテーマです。サー・ガウェインは、どの時代どの世界にもいる“私達”を象徴しているキャラクターといえます。最後まで観ると、とても大切なことに気づかされるでしょう。今のままではダメだと自覚しながらも、時間に流されていると感じている方にぜひ観て欲しい1作です。
物語に隠されたメッセージを読み解きながら観るのが好きな方にはオススメの作品であると同時に、ストレートな表現、わかりやすいストーリーが好みの方には少々負荷が大きい作品ともいえます。そういう意味で、映画の好みによって反応が大きく異なるであろうことを考えると、デートで観るよりは1人でじっくり観るか、同じスタンスの映画好きの友達と観るほうが心おきなく楽しめるような気がします。
キッズにはまだ難しいでしょうし、少々刺激が強いシーンもあるので、中学生くらいになってから観るほうが良いでしょう。世界観が独特なので、若い皆さんの感性にビビッとくるところもありそうです。今は解釈が完璧にできなくても、若い皆さんなりに感覚で楽しめる部分があると思います。こういう作品に苦手意識を持たず若いうちから触れておくと、今後の映画生活が豊かになると思います。
『グリーン・ナイト』
2022年11月25日より全国公開
トランスフォーマー
公式サイト
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TEXT by Myson