ノア・バームバック監督、アダム・ドライバー、グレタ・ガーウィグ、ドン・チードル出演と聞いて、映画ファンなら期待せずにはいられません。もちろん、期待通りノア・バームバック監督独特の世界観となっており、悲壮感と滑稽さを併せ持つキャラクターを演じる俳優陣の演技も絶妙です。改めて、監督と俳優の相性の良さも感じられます。
本作は、差し迫る死への恐怖心によって翻弄される人間を、ブラックユーモアを交えて描いています。原作はドン・デリーロの同名小説。化学物質の流出事故に遭遇した大学教授のジャック(アダム・ドライバー)は家族を連れて逃げることに。そんななか、ジャックは精神的に追い詰められ、悪夢か幻覚かもわからない状況に苛まれます。一方、ジャックの妻バベット(グレタ・ガーウィグ)にもある変化が…。
ここから先は本編で観ていただくとして、死をテーマにしながら、ユーモラスに描かれている点が魅力です。そして、ジャックに起きる不条理な出来事は本人としてはショッキングであろうと思いながら、観客としては皮肉な出来事としてどこか滑稽に映ります。また、大人と子どもの反応の違いを見せることで、順応性の差も客観視できます。彼等を観ていると、死を目の当たりにした状況でなくても、私達は日々ジャックやバベットのように、何かしら見えない恐怖に必要以上に振り回されて生きているのかもしれないと感じます。裏を返すと大切な一日いちにちをそんなことに費やしていて良いのかということに気付かせてくれる作品といえるのではないでしょうか。
思わぬ展開が出てくるので、デート向きなのかは微妙なところですが、夫婦、パートナー同士で問題に向き合う必要性を感じさせる展開もあるので、反面教師的に2人で一緒に観てみるのもアリかもしれません。Netflix上ではコメディに分類されていますが、紹介文に“不条理なコメディ”とある通り、皮肉が効いたコメディなので多少好みは分かれそうです。その点を踏まえてデートで観るか、1人でじっくり観るか決めると良いでしょう。
子ども達も登場するので、皆さんは彼等の目線で観られると思います。途中に出てくるアドベンチャー的な展開や、親子の何気ないやり取りにはクスッと笑えるシーンもあって、そこは純粋に楽しめるでしょう。ただし、親が大変な状況に陥っている姿は子ども達にはショッキングに映りそうです。内容的にはせめて中学生以上になってから観るほうが良さそうです。
『ホワイト・ノイズ』
2022年12月9日より一部劇場にて公開、12月30日よりNetflixにて配信開始
劇場用公式サイト Netflix公式サイト
TEXT by Myson