エンニオ・モリコーネの音楽にのって、映画の世界に入り旅する感覚で観られる作品。モリコーネがいかに革新的であったか、天才であったかを知ることができるドキュメンタリーです。同時に、モリコーネが作る音楽は映像が語りきれないものまで語っているのがわかり、映画音楽がいかに重要であるかを証明しています。モリコーネは、監督や俳優さえ気づいていないものまで見抜き、彼等にインスピレーションを与える存在だったことも伝わってきます。
一方で、音楽の世界では映画音楽が邪道で異端な存在として見られていたことにも驚きます。前人未踏の偉業を成しても、音楽の世界ではなかなか認められなかったというエピソードはとても切ないですが、そのなかで道を切り拓いてきたモリコーネの姿に胸を打たれずにはいられません。
本作を観ていると、モリコーネが作った数々の曲が流れてきます。曲を聴いただけで映像が甦り、観ているこちらが感極まってしまうシーンが何度もありました。モリコーネが作る音楽には、父や母への思い、妻への愛が込められているというエピソードにも胸を打たれます。さらに音楽家として何度も屈辱を味わいながら闘ってきたこと、自分を信じて音楽を作ってきたこと、そのエピソードすべてが心に響きます。まさに映画音楽の神様のみならず音楽の神様で、歴史に名を残す作曲家だと実感します。
『ニュー・シネマ・パラダイス』ほか数々の作品でタッグを組んだジュゼッペ・トルナトーレ監督が本作を撮り、多くの偉大な人物がコメンテーターとして登場している点でも映画界、音楽界の両方でいかに愛されていた偉人であるかがわかります。本作を観ると、彼が手がけた楽曲が使われた作品を観たくてたまらなくなります。モリコーネのコンピレーションアルバムをどこか出してくれませんかね(笑)。本作もブルーレイが出たら手元において何度も観たいです。良い映画を観た時には早く誰かに伝えたい、レビューを書きたいと思うものですが、まさに本作はそれにあたります。映画ファンには絶対に観て欲しい1作です。
映画好きカップルにオススメのデートムービーです。エンニオ・モリコーネは本当に多くの名作の楽曲を手掛けているので、「あの映画は観た?」「あの映画が好き」など、自ずと映画談義に華が咲くでしょう。映画好き同士の初デートなら、話すことに困らないし、次に何か一緒に観ようという約束をするきっかけにできて一石二鳥ではないでしょうか。
エンニオ・モリコーネが作曲した音楽が使われている映画がたくさんある中で、キッズやティーンの皆さんはまだ観たことがない映画が多いと思います。でも、とてもユニークな音楽や、何より聴いただけで物語が浮かんでくるようなとても心に響く曲ばかりなので、エンニオ・モリコーネの音楽を知ってから、興味を持った映画を観るという順序で楽しむのもアリだと思います。映画にハマり出したティーンの皆さんは、本作に登場する監督の名前を覚えておくのもオススメです。本作の監督ジュゼッペ・トルナトーレをはじめ、クエンティン・タランティーノ、セルジオ・レオーネ、ベルナルド・ベルトルッチ、ダリオ・アルジェント、テレンス・マリック、オリバー・ストーンなどの映画監督が手掛けた作品も観ていくとあまりに皆作風が違うので、いかにエンニオ・モリコーネがジャンルを問わず、どんな映画でも素晴らしい曲を作る神がかった仕事をしていたかがわかります。
『モリコーネ 映画が恋した音楽家』
2023年1月13日より全国順次公開
ギャガ
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TEXT by Myson