大きな荷物を背負い、高速道路上のサービスエリアを渡り歩く家族が主人公です。子どもは2人で、さらに母親は妊娠中、彼等がなぜホームレスになっているのかはしばらく明かされません。彼等は、サービスエリアで常習的に詐欺を働き、その日の食費を賄っています。
本作の序盤では一家の生活ぶり、中盤からは彼等と出会った人物との奇妙な関係が描かれています。この物語に登場する2つの家族は、それぞれに持っているものが違います。彼等はそれをお互いに補うかのようにある種の共存をしていきます。でも、この関係はある種の爆弾を抱えていて、思い通りにいかない状況が物語をドラマチックにしています。
高速道路で暮らす一家の父ギウ(チョン・イル)がまだ若いこともあり、なぜ働かないのかという疑問を持つ方も多いでしょう。それが明かされたら明かされたで純粋に共感できるかといえば、何ともいえない部分があり、もう少し韓国の社会背景がわかっていれば、感情移入しやすいのかもしれません。家族という括りで観ると、父親としてどうかという目線でどうしてもジャッジしたくなってしまうため、正直なところ、悶々とする部分はあります。ただ、韓国社会のリアルな姿をありのまま描くスタンスで作られた作品であるならば、必ずしも共感する必要はなく、捉え方も違ってきそうです。また、キャラクターのうち誰の目線で観るかによって感じ方は大きく変わりそうです。何がこの状況を作っているのか、観察してみてください。
2組の夫婦が登場し、それぞれ問題、悩みを抱えています。彼等がどう対処するのかは、とても現実的に映し出されているので、等身大で観られると思います。だからこそ、デートで観るというよりは1人でじっくり観て自分の気持ちと向き合うきっかけにできそうです。誰かを誘いたいなら、友達にしたほうが気楽に観られそうです。
子どもが2人登場するうち、特にお姉ちゃんの状況については共感要素が多いと思います。子どもの目線では、本作に出てくる大人達はどう見えるでしょうか。お手本になる部分と、悪いお手本の部分の両方があります。どんな大人になりたいか観ながら考えてみてください。
『高速道路家族』
2023年4月21日より全国順次公開
AMGエンタテインメント
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TEXT by Myson