REVIEW

同じ下着を着るふたりの女【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『同じ下着を着るふたりの女』イム・ジホ/ヤン・マルボク

これはお互いにうまく愛せない母と子の物語です。母が娘と同じ下着を着る背景には、1人の女性として生き続けたい、若くありたいという願望が見えます。一方娘は、母との繋がりを求めているように見て取れます。2人が同じ下着を着るというところで、母親になりきれない母、大人になりきれない子どもの両方がお互いに縛られている状況が比喩されているようにも見えます。
前半は一見、母親が子どもを虐待しているかのように感じる描写が出てきて、緊張感が漂います。後半は、母と娘がそれぞれに家庭の外でさまざまなことを経験し、心が変化していく様子が描かれています。この母と娘のこじれた関係に、愛憎が渦巻いています。本作の母親は反面教師のようでいて、世の母親が表に出すことができない、子育てで感じる複雑な心境を前面に出したキャラクターといえるかもしれません。一方娘のほうは母の愛情に飢えていて、なかなか親離れできません。愛着障害が疑われる部分もあり、心が深く傷付いていることがわかります。2人の姿を観ていると、反感と同情、困惑といった感情が一度に湧いてきます。母と娘の心の奥に渦巻くさまざまな思いをあぶり出し、女性として生きることの意味を見事に表現したキム・セイン監督の手腕にも脱帽です。本作で長編映画デビューした、娘イジョン役のイム・ジホと、母スギョンを演じたヤン・マルボクの名演も見どころです。観る方によって感じ方が大きく変わる作品だと思います。だからこそ、いろいろな方の感想を聞いてみたくなる作品です。

デート向き映画判定
映画『同じ下着を着るふたりの女』イム・ジホ/ヤン・マルボク

母と娘の関係に恋愛も大きな影響を与える様子が描かれているので、これから家族を持とうとしているカップルにとってはとても辛辣な内容に思えるでしょう。いろいろな考えが巡ると思うので、1人でじっくり観るか、仲の良い友達と観るほうが向いている作品だと思います。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『同じ下着を着るふたりの女』イム・ジホ

子ども目線で観ると辛くなるシーンが多々あります。一方で親が表に出さない面を本作で垣間見ることによって、少し救われる部分もあるかもしれません。いずれにしても、表面的な部分より深い内面を洞察しながら観て欲しい作品です。親子関係に悩んでいる方は、思い切って親子で一緒に観てみるのもアリかもしれません。

映画『同じ下着を着るふたりの女』イム・ジホ/ヤン・マルボク

『同じ下着を着るふたりの女』
2023年5月13日より全国順次公開
Foggy
公式サイト

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『デュオ 1/2のピアニスト』カミーユ・ラザ/メラニー・ロベール 『デュオ 1/2のピアニスト』オフィシャルサポーター石丸幹二さんサイン入りポスター 1名様プレゼント

映画『デュオ 1/2のピアニスト』オフィシャルサポーター石丸幹二さんサイン入りポスター 1名様プレゼント

映画『お嬢と番犬くん』福本莉子/ジェシー(SixTONES) お嬢と番犬くん【レビュー】

大人気コミックを実写映画化した本作の主人公は、極道の孫娘、瀬名垣一咲(福本莉子)と、瀬名垣組の若頭で一咲のボディガードを務める宇藤啓弥(ジェシー SixTONES)…

映画『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』アシュリン・フランチオージ アシュリン・フランチオージ【ギャラリー/出演作一覧】

1993年6月6日生まれ。アイルランド出身。

【映画でSEL】海辺の朝日に向かって手を広げる女性の後ろ姿 本当の自分になることの重要性【映画でSEL】

SELを積み重ねた先にどんな未来が待っているのかという点が気になるでしょう…

映画『夜明けのすべて』松村北斗/上白石萌音 夜明けのすべて【レビュー】

そして、バトンは渡された」で本屋大賞(2019)を受賞した瀬尾まいこが書いた「夜明けのすべて」を、『ケイコ 目を澄ませて』の三宅唱監督が映画化した本作には、生きづらさを抱えた2人の主人公が…

映画『Flow』 Flow【レビュー】

大洪水に見舞われた世界を舞台に、一匹の猫が生き残りをかけて冒険に出る本作は…

映画『STEP OUT にーにーのニライカナイ』仲間由紀恵/Soul STEP OUT にーにーのニライカナイ【レビュー】

“TRICK”シリーズや舞台“テンペスト”の仲間由紀恵と堤幸彦監督が10年ぶりにタッグを組んだ本作は…

映画『ロングレッグス』マイカ・モンロー ロングレッグス【レビュー】

ニコラス・ケイジがプロデューサー兼連続殺人犯を演じている本作は…

映画『白雪姫』スペシャル歌唱イベント:レイチェル・ゼグラー、吉柳咲良(日本語吹き替え版キャスト) 一生に一度しかないのではないかという想いで大事にしてきた作品です『白雪姫』レイチェル・ゼグラー来日

映画『白雪姫』で白雪姫役を演じたレイチェル・ゼグラーが初来日を果たし、日本語吹き替え版で白雪姫の声を担当した吉柳咲良と共にイベントに登壇しました。

映画『ケナは韓国が嫌いで』コ・アソン ケナは韓国が嫌いで【レビュー】

自分の現状に違和感を持っていても、打破しようと行動を起こすのは…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』トム・ホランド/ゼンデイヤ 映画好きが選ぶマーベル映画ランキング

2025年もマーベルシリーズ最新作が公開されます。そこでこれまでのマーベルシリーズも合わせて盛り上げたいということで、ランキングを実施しました。

学び・メンタルヘルス

  1. 【映画でSEL】海辺の朝日に向かって手を広げる女性の後ろ姿
  2. 映画『ワンダー 君は太陽』ジュリア・ロバーツ/ジェイコブ・トレンブレイ
  3. 【映画でSEL】複数子ども手を繋ぐ後ろ姿

REVIEW

  1. 映画『お嬢と番犬くん』福本莉子/ジェシー(SixTONES)
  2. 映画『夜明けのすべて』松村北斗/上白石萌音
  3. 映画『Flow』
  4. 映画『STEP OUT にーにーのニライカナイ』仲間由紀恵/Soul
  5. 映画『ロングレッグス』マイカ・モンロー

PRESENT

  1. 映画『デュオ 1/2のピアニスト』カミーユ・ラザ/メラニー・ロベール
  2. 映画『ミッキー17』ロバート・パティンソン
  3. 映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』
PAGE TOP