もうすぐ14歳になる少年と16歳の少女のひと夏の出来事を描いた本作は、バスティアン・ヴィヴェス著「年上の人」を原作としています。監督は、『ムード・インディゴ うたかたの日々』『イヴ・サンローラン』『ザ・ウォーク』などの作品に出演し、俳優としても活躍するシャルロット・ル・ボン。本作は、シャルロット・ル・ボンの初長編監督作品です。
もうすぐ14歳になるバスティアンは、幼い弟、両親とともに避暑地にやってきます。森の中に佇むコテージには、先に母の友人とその娘クロエが先に到着していて、2つの家族がそこで数日を過ごします。16歳のクロエは親にバスティアン達を湖に連れていくように言われ、それから徐々にクロエとバスティアンは心の距離を近づけていきます。
14歳と16歳というと、まだ子どもだけれど、大人がやることに興味を示す年齢です。この2歳の差は小さいようで大きくて、大人びた雰囲気のクロエは、バスティアンからすると近いようで遠いような絶妙な距離感があるように見えます。一方、16歳のクロエからすると、例えば、2、3歳上の男子と、2歳下の男子ではだいぶ距離感が違うように思います。クロエからするとバスティアンは身近で安心できる存在で、だからこそこの2人の関係性はつかみどころがありません。また、子どもだからこそ性的な興味からとる言動がまるで遊びの延長のようで、大人目線で観るとハラハラさせられます。ただ、遊びの延長のようでいて、やっぱり心には大きな影響があるという点で、さらに危なっかしさを感じます。
本作は、思春期特有の大胆さと脆さをとてもリアルに描いています。人はこうして大人になるのだろうけれど、本作で思春期の2人を観ていると、この時期の人間の繊細さを実感します。切ない展開もありますが、大切にしたい瞬間が込められたストーリーです。
美しい風景の中で描かれる切ないストーリーには、少しセクシャルなシーンも含まれます。大人のほうがちょっと困惑させられるようなシーンもあり、初デートや交際ホヤホヤのカップルはやや気まずいかもしれません。観た後に余韻を残す世界観、ストーリーなので1人でじっくり観るほうが向いている作品のように感じます。
友達以上恋人未満で気になる人がいるティーンの皆さんは、本作を観ると、自分達の状況を客観視できる部分がありそうです。誰かに惹かれる感覚が初めての方は戸惑いもあるでしょう。思春期は、誰でも通る美しく辛い時期だからこそ、視野を広げるために本作を観てみるのもアリだと思います。
『ファルコン・レイク』
2023年8月25日より全国順次公開
PG-12
パルコ
公式サイト
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TEXT by Myson
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