REVIEW

ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』アンソニー・ホプキンス

REVIEW

本作はチェコスロヴァキアに逃れていたユダヤ人難民の子ども達669名の命を救ったニコラス・ウィントンの実話を、彼の若き日と老いてからの日を行き来しながら描いた作品です。1909年生まれで2015年7月に逝去されたニコラスは、公式サイトによると、15年前に本作の企画が立ち上がった際、プロデューサー、エミール・シャーマンとイアン・カニングと直接会い、企画を快諾したとのことです。また、当時のことについてイアン・カニングは「ニコラス・スウィントンは、映画化するなら自分を賛美するものではなく、ごく普通の人々が非常に大きな影響を及ぼすことができるということを称える作品でなければいけないと考えていました」と振り返っています。この逸話が物語るニコラスの人間力の高さは本作を観ていても伝わってきます。そして、本作はニコラスの娘バーバラ・スウィントンの著書「If it’s Not Impossible…」を原作としており、彼女は映画制作にも協力しています。老年のニコラス役にはアンソニー・ホプキンスが適任ではないかと進言したのも彼女だそうです(映画公式資料より)。

映画『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』ジョニー・フリン/ヘレナ・ボナム=カーター

物語の始まりは、第2次世界大戦直前の1938年。ナチスドイツの迫害から逃れようと多くのユダヤ人難民がチェコスロヴァキアのプラハに逃げてきていました。イギリスのロンドンで株の仲買人をし不自由のない生活をしていた若きニコラス・ウィントン(ジョニー・フリン)は、住む所もなく食べる物もない難民達の支援のために一時的に子ども達をイギリスに避難させようと、同志達とともに里親探しと資金集めに奔走します。でも、ナチスドイツの勢力が増しているなか、子ども達を移送するのには大きな危険を伴います。それでも命懸けで子ども達を守るために闘い続けたニコラス達の姿に胸を打たれます。

映画『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』アンソニー・ホプキンス/ジョナサン・プライス

本作はこれだけでは終わりません。過去と現在を行き来して描いているのには大きな意味があります。その描写こそ、ニコラスが成し遂げた偉業の大きさを物語っていて、人を助ける意義深さを教えてくれます。そして、前述にあるニコラスの希望通り、ごく普通の人々の力がいかに大きいかを物語る作品となっています。さらに、アンソニー・ホプキンスの演技に痺れるのはもちろんのこと、レナ・オリン、ジョナサン・プライス、ヘレナ・ボナム・カーターといった重鎮達の共演にも圧倒され、ジョニー・フリン、アレックス・シャープの演技にも魅了されます。
今もなお世界中で戦争が起こっており、難民の問題が絶たれることはありません。また、人と人との触れあい方が大きく変化してきた現代社会では、”個”に意識が向きがちで、人助けをする感覚と距離ができてしまったのかもしれません。本作はそんな現状にふと気付きを与えてくれる作品です。

デート向き映画判定

映画『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』アンソニー・ホプキンス

ニコラスは年を重ねてもずっと過去の出来事に苦しみ、執着しています。そんなニコラスをそっと支える妻グレーテ(レナ・オリン)の姿にも共感できます。周囲から見るとニコラスは充分過ぎるほど貢献したといえても、彼自身は救えなかった命について悲しみを手放せません。家族にとっても心配が続きますが、そんな時にどんな距離感で支えているのか、カップルとしてもスウィントン夫妻をお手本にできるところがあると思います。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』ジョニー・フリン

多くのユダヤ人の子ども達が親元を離れて、イギリスに避難します。親と一緒にいても怖い思いをしたでしょうし、親と離れて避難するのも怖かったと思います。皆さんは等身大で子ども達の心情を体感できるのではないでしょうか。そして、何の見返りもなく命懸けで子ども達を救った人達の姿からも感じるものがあると良いなと思います。

映画『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』アンソニー・ホプキンス

『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』
2024年6月21日より全国公開
キノフィルムズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© WILLOW ROAD FILMS LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2023

TEXT by Myson

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年6月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『2度目のはなればなれ』グレンダ・ジャクソン グレンダ・ジャクソン【ギャラリー/出演作一覧】

1936年5月9日生まれ。イギリス出身。

映画『本心』池松壮亮 本心【レビュー】

本作は、『マチネの終わりに』『ある男』の原作者、平野啓一郎の同名小説「本心」の映画化…

映画『不死身ラヴァーズ』見上愛 見上愛【ギャラリー/出演作一覧】

2000年10月26日生まれ。東京都出身。

映画『八犬伝』役所広司/内野聖陽/土屋太鳳/渡邊圭祐/鈴木仁/板垣李光人/水上恒司/松岡広大/佳久創/藤岡真威人/上杉柊平/河合優実/小木茂光/丸山智己/真飛聖/忍成修吾/塩野瑛久/神尾佑/栗山千明/中村獅童/尾上右近/磯村勇斗/大貫勇輔/立川談春/黒木華/寺島しのぶ 八犬伝【レビュー】

こういう映画を観た時には思わず私的な感想を述べたくなるもので…

映画『オアシス』伊藤万理華 伊藤万理華【ギャラリー/出演作一覧】

1996年2月20日生まれ。大阪府出身。

映画『きいろいゾウ』向井理 映画好きが推すイイ俳優ランキング【国内40代編】雰囲気部門

イイ俳優ランキング【国内40代編】から、今回は<雰囲気部門>のランキングを発表します。総合と比べてどのようにランキングが変化しているのか注目です!

映画『カッティ 刃物と水道管』ヴィジャイ/サマンタ カッティ 刃物と水道管【レビュー】

本作は、南インド、タミル語映画界で人気の俳優ヴィジャイと、社会的メッセージを娯楽作品に落とし込むのが得意な…

映画『カーリングの神様』本田望結 『カーリングの神様』キャスト登壇!公開直前特別試写会 10組20名様ご招待

映画『カーリングの神様』キャスト登壇!公開直前特別試写会 10組20名様ご招待

映画『がんばっていきまっしょい』 がんばっていきまっしょい【レビュー】

1995年に“坊っちゃん文学賞”を受賞した青春小説「がんばっていきまっしょい」(敷村良子著)が…

映画『ザ・バイクライダーズ』オースティン・バトラー 『ザ・バイクライダーズ』ゲスト登壇付き!日本最速試写会 5組10名様ご招待

映画『ザ・バイクライダーズ』ゲスト登壇付き!日本最速試写会 5組10名様ご招待

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『きいろいゾウ』向井理 映画好きが推すイイ俳優ランキング【国内40代編】雰囲気部門

イイ俳優ランキング【国内40代編】から、今回は<雰囲気部門>のランキングを発表します。総合と比べてどのようにランキングが変化しているのか注目です!

Netflix映画『シティーハンター』鈴木亮平 映画好きが推すイイ俳優ランキング【国内40代編】総合

今回は、国内40代(1975年から1984生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で60名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。40代は皆そもそも知名度が高いので、予想が難しいところ、どんな結果になったのか、ぜひご覧ください。

映画『僕はイエス様が嫌い』佐藤結良 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.1

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介!

REVIEW

  1. 映画『本心』池松壮亮
  2. 映画『八犬伝』役所広司/内野聖陽/土屋太鳳/渡邊圭祐/鈴木仁/板垣李光人/水上恒司/松岡広大/佳久創/藤岡真威人/上杉柊平/河合優実/小木茂光/丸山智己/真飛聖/忍成修吾/塩野瑛久/神尾佑/栗山千明/中村獅童/尾上右近/磯村勇斗/大貫勇輔/立川談春/黒木華/寺島しのぶ
  3. 映画『カッティ 刃物と水道管』ヴィジャイ/サマンタ
  4. 映画『がんばっていきまっしょい』
  5. 映画『リトル・ワンダーズ』スカイラー・ピーターズ/フィービー・フェロ/ローレライ・モート/チャーリー・ストーバー

PRESENT

  1. 映画『カーリングの神様』本田望結
  2. 映画『ザ・バイクライダーズ』オースティン・バトラー
  3. 映画『トラップ』オリジナルクロスボディバッグ
PAGE TOP