REVIEW
弥生(江口のりこ)、愛美(内田慈)、清美(古川琴音)の3姉妹が主人公の本作は、ペヤンヌマキによる同名戯曲を、『ぐるりのこと。』『恋人たち』の橋口亮輔監督が脚色して映像化したドラマシリーズを再編集により映画化した作品です。姉妹は母の誕生日を機に親孝行をしようと、4人で温泉旅行にやってきます。でも、宿に着くなり弥生は文句ばかりで、宿を手配した愛美を責めます。愛美もネガティブパワー炸裂の母にそっくりな姉の弥生の愚痴を末っ子の清美に漏らします。そんななか、清美が用意した“プレゼント”が姉妹の間にさらなる波を立たせます。
本作は、橋口亮輔監督作としては9年ぶりの長編です。映画公式資料にある橋口監督のお話によると「原作が舞台作品なのでセリフ量が多いし、カチッと見せなければいけない要素も多い。力のある俳優さんでないと無理なんですね」という状況で、江口のりこは早々に名前が挙がっていたとのこと。ただ、超売れっ子なので数か月後に撮影では難しいだろうと思うなか、江口は脚本も読まずに橋口監督の新作ならといって二つ返事で受けたといいます。次女の愛美役には原作の舞台にも出演していた内田慈を起用し、作品のガイド役を期待したそうです。初の共同作業となる古川琴音については「本当にお芝居が好きな方」と橋口監督は語っています。こうしたキャスティングの甲斐あって、舞台演劇を観ているような熱量が伝わってきます。そして、この3人に負けじと存在感を発揮する、青山フォール勝ち(ネルソンズ)にも要注目。お笑い芸人としてのセンスが俳優としても活かされているのでしょうか、とても良い味を出しています。
「お母さんと一緒」じゃなくて、「お母さんが一緒」というタイトルの意味がとても効いています。良くも悪くも母親という存在は大きいこと、母親は面倒くさい存在でありつつ偉大な存在であること、娘という立場は母の生き方から逃れられない部分があること、などなどさまざまな想像が膨らみます。観ているだけでもエネルギーを奪われるような姉妹のネガティブパワーに圧倒されながら、時折ネガティブ過ぎてクスッと笑える絶妙なユーモアが魅力的なストーリーです。舞台演劇が基となっている点で、映画であっても舞台を観ているような、良い意味での圧が保たれているからこそ、姉妹の世界観に巻き込まれる感覚を味わえます。女子としては「わかる、わかる」と「なんでやねん!」が入り混じる本作、ぜひ心の中でツッコミながらご覧ください。
デート向き映画判定
クセが強い姉妹の激しいネガティブバトルが繰り広げられるので、かなりエネルギーを消耗します(笑)。とはいえ、女性の本音が直球で飛び交うので、パートナーに実状を知ってほしい場合は、本作の力を借りるのも1つの手かもしれません。そして、カップルのやり取りも一部参考になる部分があります。というわけで、カップルで観てもおもしろいのではないでしょうか。
キッズ&ティーン向き映画判定
シンプルなストーリーなので年齢問わず内容についていくことはできそうですが、心情の理解という点ではせめて思春期に入ってから観るほうがピンとくる部分が多いような気がします。母と娘で観るのも良いし、姉妹がいる方は姉妹で観るのも楽しそうです。
『お母さんが一緒』
2024年7月12日より全国公開
クロックワークス
公式サイト
©2024松竹ブロードキャスティング
TEXT by Myson
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情報は2024年7月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
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