REVIEW
ジョン・F・ケネディ大統領が人類初の月面着陸を1960年代のうちに実現すると宣言してから8年が経った1969年、NASAでの宇宙開発は続いていたものの、国民の関心は薄れ、開発費の捻出にも行き詰まっていました。そんななか、宇宙開発に再び光を当てようと、政府関係者のモー(ウディ・ハレルソン)は、敏腕PRマーケターのケリー(スカーレット・ヨハンソン)を雇い、ケリーは型破りな方法で宇宙開発事業のPRを行います。でも、生真面目なNASAの発射責任者コール(チャニング・テイタム)は、ケリーの嘘だらけのやり方が気に入りません。それでも少しずつ2人が距離を縮めていくなか、モーはケリーにとんでもない依頼をします。
本作は、人類初の月面着陸にまつわる陰謀説を敢えて持ち込み、NASAが成し遂げた偉業を描いています。映画公式資料によると、グレッグ・バーランティ監督は「この映画は結局のところ、なぜ真実が重要なのかを説きながら、とても有名な陰謀論を通してそれを描いているのです!」と本作の中心となる皮肉について語っています。本作は、溢れる情報によって人々が右往左往する現代社会を大いに皮肉っているといえます。フェイク動画も問題になっている現代だからこそ、余計に身近なテーマに感じます。
そして、本作でケリーを演じたスカーレット・ヨハンソンは、ジョナサン・リアとキーナン・フリンとともに設立した“These Pictures”を通じて、プロデューサーを務めています。ヨハンソンは当初製作者として関わり、ケリーを演じるつもりはなかったけれど、脚本を読んでケリー役を演じずにはいられなくなったそうです。さらに彼女は監督にバーランティを選んで説得したそうです(映画公式資料より)。そんなヨハンソンの本作への思い入れが映画からヒシヒシと伝わってきます。
本作はとてもユニークな発想でユーモラスに、国全体のムードを高めることの重要さと、真実の重さの両方を描いています。引いてはエンタテインメントと政治について描いているとも受け取れて、政治がエンタテインメントになってはいけないし、政治関係者が暴走しないよう国民が政治に真実を求める姿勢を忘れてはいけないと改めて感じます。映画としては人間ドラマと、ラブストーリー、ファッションと楽しめる要素が複数あるので、さまざまな視点でご覧ください。
デート向き映画判定
スカーレット・ヨハンソンが演じるケリーも、チャニング・テイタムが演じるコールもそれぞれに自分の仕事に徹していて、2人がどんな関係に発展していくのか読めない点も本作の見どころです。ラブストーリーがメインではないものの要でもあるので、デートで観る場合にも良い塩梅となっています。気まずいシーンもないので、初デートでも安心して観られます。
キッズ&ティーン向き映画判定
宇宙開発は、アメリカとソ連(現ロシア)を軸に続いた冷戦時代を象徴する事柄の一つなので、歴史の授業でも出てきますよね。本作を観ると歴史上の世界情勢にも一層興味が湧くと思います。また、宇宙開発そのものや、PRという仕事、当時のファッションなど興味をそそるポイントが複数あります。何か刺激を受けたら、自分なりに関連情報を探してみるとおもしろそうです。
『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』
2024年7月19日より全国公開
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト
TEXT by Myson
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情報は2024年7月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
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