REVIEW
仲良し3人組のタラ(ミア・マッケンナ=ブルース)、スカイ(ララ・ピーク)、エム(エンヴァ・ルイス)は、卒業を前にしてギリシャのクレタ島にある、パーティーが盛んなリゾート地、マリアを訪れます。この旅行で初体験を果たしたいタラが出会いを期待して胸を膨らませていたところ、ホテルの隣の部屋のグループと交流の機会が巡ってきます。
序盤はティーンエイジャーの元気な様子が映し出され、3人とも強気な発言をしています。でも、経験のないタラはいざとなるとしおらしくなります。大人目線では、そのしおらしさに逆にホッとするのも束の間、不穏な空気が漂ってきます。初体験をしたいと考えていたとしても、タラが望む初体験とはどのようなものだったのか、本作はその解釈を一旦観客に委ねてきた上で、最後にタラの心情を明かします。
本作は性的同意について問う内容となっています。同意は果たして言語のコミュニケーションだけで確認、確信して良いのでしょうか。そもそも性的同意を確認された時、拒否できる状況にあるといえるでしょうか。拒否のサインは見落とされていないでしょうか。本作の同じシーンを観て、同意していないとわかる方もいれば、同意したと受け取る方もいらっしゃると思います。だから、この性的同意の問題は解決が難しいと本作を観て改めて感じます。
「はっきり拒否すればいい」「その場を立ち去ればいい」という意見もきっとあるでしょう。そうできるならそうしたほうが良いと私も思います。でも、怖くて硬直してしまうこともあるでしょうし、知人ならその後の人間関係を考えてしまうこともあるでしょう。この場にいる状況を作ってしまった自分自身に非があると感じて動けなくなっていることもあると思います。だから、身体的、心理的に強い立場にある人間は、相手にそうした心理が働いて拒否できないのかもしれないという想像力を持つ必要があります。
そして、本作では周囲の人間の態度も思わぬ事態を招く可能性を持っていると示しています。友達なのだから本心を言えば良いのでしょうが、特にティーンエイジャーの友人関係は複雑です。当事者からすれば心配させたくないという思いもあれば、見栄をはってしまうこともあるでしょうし、逆の立場からすると嫉妬が入ったり、単に理解が浅くて友達の本心が読めないままでいることもありえます。そんなティーンエイジャーの複雑な心情も本作は丁寧に繊細に描いています。
デジタル社会になり、ますます言語のコミュニケーションに偏ってきました。だからこそ、本作で描かれているような表情や仕草、声のトーンというような非言語コミュニケーションの重要性を感じます。若者だけではなく大人も含め、本作がそういったことを考える機会になることを期待します。
デート向き映画判定
性的同意を問う内容なので、シリアスな空気になると思いますが、カップルだからこそ身近な問題です。直接言葉では説明できませんが、逆に本作を観ることで一緒に考える機会になると思います。感想を述べ合うのは気まずいとしても、一緒に観て共有するだけでも意味があると思います。
キッズ&ティーン向き映画判定
ティーンの皆さんは等身大でキャラクター達の心情を感じられると思います。自分自身の身を守るためにもぜひ観て欲しい作品です。友達同士のやり取りにも考えさせられるところがあるので、仲の良い友達と観ると良いでしょう。困った時に本心を明かして相談できる友達はとても重要です。
『HOW TO HAVE SEX』
2024年7月19日より全国公開
PG-12
カルチュア・パブリッシャーズ
公式サイト
©BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023
TEXT by Myson
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情報は2024年7月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。