REVIEW
『悪人』『さよなら渓谷』『怒り』など数多くの映画化作品がある吉田修一の同名小説を映画化した作品とあって、心して観たものの、やっぱり想像以上にズシっと重たいものを感じる作品となっています。自己肯定感が下がりまくっている時に観るとかなり辛いかもしれません。
江口のりこが演じる桃子は、夫や義母など周囲の人の世話を惜しみなくしています。夫との関係は冷え切っているようでいて、桃子は明るく接し、関係を修復しようと努力しているように見えます。そして、ストーリーが進むにつれて、実態が明かされてくると、桃子が置かれている状況が一層残酷に見えてきます。何気なく映るシーンにどんな意味があるのかがわかってくると、その残酷さが身に沁みます。
同時に桃子の過去も明らかになってくると、それまでとは違う複雑な感情が喚起されます。何も悪くない人物が自分を責めて苦しむ姿、何かにすがろうと必死な人物が蹴落とされそうになる姿を観るのが相当辛いです。ただ、人は盲目的に執着しているものを手放すと、違う生き方を見つけられるのではないかという希望が見える部分もあります。なので、メンタルが弱り過ぎている時に観るのはあまりオススメしませんが、前向きな気持ちが出てきた時に観るなら、良い刺激をもたらしてくれる可能性もあります。
そして、江口のりこの演技力の高さを改めて感じられる、見応えのある作品となっています。人間のいろいろな感情が観られて、本当の幸せとは何かを考えるきっかけにもできると思います。
デート向き映画判定
夫婦関係、恋愛関係がしっくりきていない方は、本作を機に別の選択肢がよぎるかもしれません。また、目を背けている場合は、自分の現実を客観視する機会になりそうです。そういう意味で、デートで観るのは不向きかなと思います。1人でじっくり観るか、本音を話せる仲の良い友達と観るほうが良いでしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定
大人の恋愛や悩みが描かれているので、ある程度人生経験を積んでから観たほうが、より感情移入できると思います。とはいえ、どんな人間関係に置き換えても観られる部分はあるので、ビビッときたら観てみても良いのではないでしょうか。ただ、心の居場所がないとか、誰かに必要とされていないと強く感じている状況では悪い展開ばかりにフォーカスして辛くなるかもしれません。俯瞰して観る余裕がない場合や、気持ちが引っ張られ過ぎる方は観るタイミングを考えましょう。
『愛に乱暴』
2024年8月30日より全国公開
東京テアトル
公式サイト
©2013 吉田修一/新潮社 ©2024「愛に乱暴」製作委員会
TEXT by Myson
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情報は2024年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
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