社会派青春映画の第3弾として、「奨学金制度」や「パパ活」にスポットを当て大学生のリアルを描いた映画『威風堂々~奨学金って言い方やめてもらっていいですか?~』。今回は本作で主人公の空役を演じた池田朱那さんにインタビューさせていただきました。
<PROFILE>
池田朱那(いけだ あかな):唯野空 役
2001年10月31日生まれ。群馬県出身。主な出演作に映画『20歳のソウル』、大河ドラマ『青天を衝け』、よるドラ『ここは今から倫理です。』などがあり、『ふたりの背番号4』ではドラマ初主演を飾った。2023年8月には初主演映画『17歳は止まらない』が公開。映画『威風堂々~奨学金って言い方、 やめてもらっていいですか?~』では主人公の空役を好演。
言動や性格が自分とは違うからこそ、空に対してとても興味を持てました
シャミ:
本作は、大学生の奨学金制度やパパ活問題のリアルを描いた物語でした。最初に脚本を読んだ時に、物語や空というキャラクターにどんな印象を受けましたか?
池田朱那さん:
私には空と同じような経験はありませんが、すごく共感できました。私も空のように奨学金を借りて同じ環境に置かれたら、もしかしたらパパ活に頼ろうとしてしまうかもしれないと感じ、空の気持ちがすんなりと理解できました。私自身空のように奨学金制度がどんな制度なのか詳しく知らなかったので、そういった点ではそのまま空を演じられるんじゃないかと思いました。
また、今はSNSでいろいろな方の情報を知ることができるので、中には空のような方や、専門学校に行きたいとか何かお金が必要で、パパ活のようなことをして稼いでいる女の子がいることを知っていました。なので、そういう意味でも空の行動は他人事とは思えませんでした。
シャミ:
なるほど〜。空は最初平凡な大学生でしたが、奨学金返済のために裏バイトに手を出してしまいました。彼女を演じる上で、特に気をつけた点やもし事前に調べたことや準備されたことがあれば教えてください。
池田朱那さん:
なるべく等身大でいようと心掛け、普通の女の子として演じられたらベストだと思いました。奨学金の制度については、きっと空もものすごく調べたと思うので、それと同じように私もたくさん調べました。また、すごく長文で奨学金について書かれていた投稿なども読み、実在するいろいろな方達の情報をもとに私なりの空を作っていきました。
シャミ:
誰か1人をモデルにしたのではなく、いろいろな方の要素をあわせて空像を作り上げたんですね。ちなみに監督とは何か社会問題が反映されていることや、空というキャラクターについて話し合ったことはありますか?
池田朱那さん:
監督は全部任せてくれる方だったので、自由に演じさせていただきました。本当に全部任せてくださったので、逆に戸惑う時もありましたが、監督の「この映画はあまりしんみりさせずにポップな映画になったらいいな」という想いが伝わってきたので、そこを心掛けました。ただ1つだけ、「ここで顔芸して」と言われたことがありました(笑)。でも本当にそれぐらい任せてくださいました。
シャミ:
そうだったんですね!空というキャラクターとご自身とで似ているところや特に共感できたところはありますか?
池田朱那さん:
共通点といえば奨学金に無知だったことでしょうか。それから私が空を演じているので、喋り方やテンションは似ていると思います。でも、言動や性格は私とは違うので、「こんなことを言うんだ」「こんな行動ができるのか」と感心する部分が多く、空に対してとても興味を持てました。感心を持てたからこそ、いろいろと研究しながら演じることができたと思います。
シャミ:
そういったご自身とは違う性格のキャラクターを演じるほうが演じやすいのか、それとも逆のほうが演じやすいのか、いかがでしょう?
池田朱那さん:
性格自体は全然違っても大丈夫ですが、生きてきた環境が違いすぎると難しく感じることがあります。私が役づくりをする時に、まず自分の今までの経験をもとに表現を引き出すのですが、例えば何か悔しいことが私にあって、役にも悔しいことがあったとします。その悔しい理由は違ったとしても、悔しさはたぶん似ているだろうと考えて役として表現します。そうやって少しでも似ている経験や環境であるほうが演じやすいです。逆に共通する部分がない役の場合は、すごくたくさん調べて万全の準備をするようにしています。
シャミ:
どちらもそれぞれ工夫があるんですね。本作では奨学金がテーマとなっており、そういったお金にまつわるテーマは、デリケートに扱われがちだと思うのですが、本作に出演して何か感じられたことなどはありますか?
池田朱那さん:
世の中には本当に綺麗事が多すぎるなと改めて感じました。奨学金にはメリットもありますが、良いことだという印象があまりにも強くあることに少し違和感があります。あとは、奨学金だけでなく、税金や補助金など、いろいろな制度がたくさんありますが、本当に良いものに限って必要な方になかなか届いていないのかなと思います。
シャミ:
いろいろな制度がたくさんあるので、いざ調べてもなかなか辿り着けないこともありますよね。
池田朱那さん:
メリットのある制度については自分で調べないとわからないことが多いですよね。だからこそ今回のような作品があると良いなと思います。自分で調べて難しい文字を読むよりも、こういった作品を通して伝えられる機会がこれからも増えていったらいいなと思います。
シャミ:
今回の映画を経て池田さんご自身がお金との向き合い方で変わった部分や、普段から気をつけていることはありますか?
池田朱那さん:
以前からになりますが、私はいつ何があってもいいように、貯金をしているタイプなんです。この金額は絶対に切ってはいけないというラインを決めています。
シャミ:
偉いですね!
池田朱那さん:
両親の影響もあり、いつ何があっても対応できる金額は常に貯めておこうという考えです。何かあってからでは怖いので一定のラインを決めていて、もし私に何かあっても、貯金がゼロですとならないようにしたいと思っています。
シャミ:
大切なことですよね。子どもの頃からしっかり貯金をされるタイプだったのでしょうか?
池田朱那さん:
子どもの頃はお金についてあまりわかっていませんでしたが、両親がお年玉などを私の口座に貯めていてくれたんです。私は高校生の時に一人暮らしをしたのですが、その貯金があったおかげであまり大変な思いをしなくて済みました。それをきっかけに貯金があることは大事なんだと思うようになりました。
シャミ:
素晴らしいご両親ですね!空のように壁にぶつかり悩んでいる方が傍にいたら、池田さんご自身はどのように声をかけますか?
池田朱那さん:
私はとにかく話を聞いて、まずは共感ポイントを探します。私自身が悩んでいる時に、苦しんでいる気持ちをわかってもらえると、すごく楽になるので、自分が相談された場合もまず共感した上で、「こうしてみたらもしかしたら解決するかもしれないよ」と話します。もしそれが間違っていると感じたとしても、それは私の感性でしかないと思うんです。ただ、「ちょっと人に迷惑をかけているかもしれないよ」「相手を傷付けているかもしれないよ」とはさりげなく伝えるかもしれません。
だからもし空が身近にいたとしたら、パパ活の選択については、「勇気を持って選択をしたんだね」とまずは受け入れます。だけど、「そこには危険があるかもしれない」「犯罪になってしまうかもしれない」といったことを伝えた上で、こうしたらいいかもよとアドバイスします。
シャミ:
上手なアドバイス方法ですね!ちなみにご自身で悩みがあったり、壁にぶつかった時は普段どのように対処されていますか?
池田朱那さん:
今までは誰かに相談することはほとんどありませんでした。気を遣ってしまうのかわかりませんが、私の悩みを聞いて一緒に負の感情にさせてしまったらどうしようと心配になってしまうんです。でも、今はマネージャーさんにはよく相談に乗ってもらっています。ただ、やっぱり相談したことに対して罪悪感を覚えてしまって、それをまた相談するという繰り返しで慰めてもらっています(笑)。
一同:
ハハハハ!
シャミ:
優しい相談相手がいて良かったです。では最後の質問です。池田さんが俳優のお仕事を続けてくなかで、常に意識されていることや、気をつけていることは何かありますか?
池田朱那さん:
やっぱり役作りが1番大事なので、受け入れられやすいようにしておくことです。あと、私は普段ドキュメンタリー作品を結構観ています。ドキュメンタリーには台詞がないので1番リアルで、それを観ながらその人が言った言葉を喋ったり、同じような笑い方、泣き方をしてみたり、私にはないトーンの喋り方をしてみたりしています。
シャミ:
映画やドラマではなくリアルなドキュメンタリーを観て研究されているんですね。
池田朱那さん:
そうです。私には持ち合わせていない性格や特徴の方のドキュメンタリーは何回も観直したりしています。
シャミ:
すごいですね!本日はありがとうございました!
2024年7月1日取材 Photo& TEXT by Shamy
『威風堂々~奨学金って言い方やめてもらっていいですか?~』
2024年8月30日(金)より全国順次公開
監督・脚本:なるせゆうせい
出演:池田朱那/吉田凜音/簡秀吉/田淵累生/小野匠/光徳瞬/高木ひとみ〇/あまりかなり/是近敦之/遠山景織子
配給:トリプルアップ
特にやりたいことも夢もない高校3年の空(ソラ)は、将来の保険として大学へ進学する。それと同時に奨学金という借金を背負うことになる。その後、親との確執もあり、家を飛び出し彼氏と同棲生活を始めるが、そこでもお金の問題が発生し…。
©映画「威風堂々」製作委員会