REVIEW
リチャード・リンクレイター監督作で、グレン・パウエルが主演のみならず共同脚本とプロデューサーも務めていると聞いただけで観ると決めた本作について、毎度のことながら前情報を入れずに観ました。本作を観る前、この映画について不思議に思っていた点があります。それは“殺し屋のフリ”をしていた人の実話ということです。“殺し屋のフリ”って、どういうシチュエーションで必要になるのか想像がつかないものの(笑)、観れば納得です。ちなみに実話ベースとはいえ、正確には一部フィクションです。
グレン・パウエルがリチャード・リンクレイター監督作に初めて出演したのは14歳の時、『ファーストフード・ネイション』で、本作は4度目のコラボレーションとなります。映画公式資料によると、本作はスキップ・ホランズワースが20年前に「テキサス・マンスリー」誌に寄稿したゲイリー・ジョンソンという男の記事“Hit Man”を基にしています。グレン・パウエルはプロデューサーのマイケル・コスティガンからこの記事を紹介され、リンクレイター監督に声をかけ一緒に映画化する方法を考えたといいます。実はスキップ・ホランズワースはリンクレイター監督の友人で、記事が掲載された2001年当時に監督自身も一度は映画化を考えたものの、当時はアイデアがまとまらずに断念。20年以上の時を経て、この度映画化が実現したことになります。
「執筆中、リンクレイターとパウエルは実際の嘱託殺人事件についてリサーチし、監視カメラのテープを何時間も見た。人を殺そうと考えている人間のリアルな話し方を捉え、それらのいくつかは実際に映画の台詞にも登場する」(映画公式資料より)とのことで、やはりリアルな会話にこだわるリンクレイター監督作のスタンスは健在です。そして、共同で脚本を担当しながら主演を務めたパウエルの演技力によって、実在するとはいえかなり特異なゲイリーという人物が身近に感じられます。ゲイリーの七変化も本作の見どころなので、風貌はもちろん、振る舞い方がコロコロ変わる様子もお楽しみください。
ゲイリーが心理学、哲学の先生ということで、本作には、ニーチェの言葉をはじめ哲学的な言葉が多く出てきます。人生を輝かせるために人は何をすべきなのか、そして人は変われるのか、人間の可能性を本作で観察してみてください。
デート向き映画判定
ユーモアとスリルの両方が味わえる人間ドラマで、誰が観ても共感できるところがあると思います。ただ、『ヒットマン』というタイトルだけ聞くと、アクション映画かなと勘違いされる方もいそうなので、相手を誘う際は、偽の殺し屋の実話という程度の情報は伝えておくと良さそうです。そうすれば、一層興味を持ってもらえる可能性もあるのではないでしょうか。
キッズ&ティーン向き映画判定
純粋にエンタテインメントとして楽しめると同時に、人生哲学が語られる場面や、いろいろな人物になりきる主人公を観て、自分の人生観やアイデンティティについて考えるきっかけにもなります。なので、中学生、高校生くらいになって自分の意志で観たいと思った時に観るほうが心に刺さりそうな気がします。
『ヒットマン』
2024年9月13日より全国公開
PG-12
KADOKAWA
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2024年9月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。