世界三大毛織物(ウール)の産地として世界的に注目されている愛知県から岐阜県にまたがる尾州地域を舞台に発達障害を持つ主人公がさまざまな壁にぶつかりながらも夢に挑戦する姿を描いた物語『BISHU 〜世界でいちばん優しい服〜』。今回は本作で初主演を飾った服部樹咲さんにお話を伺いました。
<PROFILE>
服部樹咲(はっとり みさき):神谷史織 役
2006年7月4日生まれ。愛知県出身。2020年、映画『ミッドナイトスワン』でヒロインを演じ、第44回日本アカデミー賞新人俳優賞他、受賞。2022年、ドラマ『競争の番人』に出演、2023年DMM.TVオリジナルドラマ『EVOL』ではトリプル主演の1人を務めた。また、短編映画で多数主演を飾る他、「docomo future project KAZE FILMS」「meiji」などのCM出演、雑誌「GINZA」ではDIORを着用するなど、モデルとしても活動の幅を広げている。『BISHU 〜世界でいちばん優しい服〜』では長編映画初主演を飾る。
※前半は合同インタビュー、後半は独占インタビューです。
いろいろな方に支えられているからこそ前に進んでいけると強く感じました
記者A:
最初に本作のオファーをいただいた時はどんなお気持ちでしたか?
服部樹咲さん:
本作のプロデューサーの森谷さんに初めてお会いしたのが、『ミッドナイトスワン』のオーディションの時で、当時私は12歳でした。それから5年が経ち、17歳になりこの作品で改めてご一緒することができたので、また俳優として新しい一面を見せられたらいいなと思いました。そして、今回は長編映画初主演で、明るくて可愛らしい役も初めてだったので、プレッシャーがありつつも楽しみにしていました。
記者A:
役作りはどのようにされましたか?
服部樹咲さん:
今回はかなり細かく役作りをして、監督ともたくさんディスカッションをしました。この映画は主演として監督をはじめ皆さんと一緒に作り上げた感覚があり、初めて味わう達成感のようなものがありました。今までも映画に参加したことはありますが、やはり主演とは少し感覚が違い、今回オールアップした時はすごく嬉しくて、本当にいろいろな方に支えてもらったおかげだと思いました。
記者A:
日々過ごすなかで特に支えられていると感じるのはどんな時でしょうか?
服部樹咲さん:
家族にはすごく支えられていると感じます。俳優になったすべての始まりはクラシックバレエで、その才能を見つけてくれたのが母でした。幼稚園の時に盆踊り大会があって、私が踊っていた時に「指先が色っぽくて綺麗だから、絶対に踊りを習わせたほうがいい」と母が才能を見つけてくれてバレエを始めました。そして、守ってくれたのもやっぱり家族です。バレエを続けるなかで、コンクールで母と地方に1週間行ったりして、家族に迷惑をかけることもあったのですが、「全然いいよ」と言って協力してくれました。そして、バレエをやっていたからこそ『ミッドナイトスワン』という映画にも出会えたので、本当に家族に支えられているんだなと強く感じます。今回『BISHU 〜世界でいちばん優しい服〜』に出演してみて、やっぱりいろいろな方に支えられているからこそ前に進んでいけるんだと強く感じました。
記者B:
発達障害を持った役という点でも難しかったと思いますが、何か事前に勉強や準備をされたことはありますか?
服部樹咲さん:
発達障害については事前に当事者の方達に取材をさせていただきました。実際にどんな症状があるのか聞いたり、脚本の中でおかしな部分がないかなど、擦り合わせをしました。2時間くらいの間にすごくたくさんお話を聞けて、本当に濃密な時間でした。
ただ監督としては発達障害だから特別なことができるとか、ヒーローのように描きたいのではなく、誰にでも得意不得意があり、得意な部分を誰かに見つけてもらい、発揮していくという物語を描きたいとおっしゃっていました。なので私は、取材で得たことを取り入れながら史織の持つ魅力や可愛らしさにフォーカスをして、観る方が笑顔になれるようなキャラクター作りをしました。
シャミ:
史織と家族や友達との関係がとても温かく素敵でした。史織が夢を見つけて頑張ろうとする一方で、家族や友人とすれ違ってしまう場面もありましたが、服部さんご自身は、史織と周囲の方達の関係を、どう捉えて演じていましたか?
服部樹咲さん:
神谷家の人達はお互いを思い合うからこそぶつかってすれ違ってしまうのですが、私の家族とも似ています。私には姉がいて、姉も時々厳しいことを言う人で、布美(岡崎紗絵)と似ている部分があるので、すごく親近感を感じました。史織のお父さん(吉田栄作)についても、私の母と似たような節があります。私が自分勝手にやりたいと言ったものに対して心配をして止めることもあり、家族の雰囲気がかなり似ています。
シャミ:
神谷家にとても親近感を感じられたんですね。史織というキャラクターについては特に共感した点や、ご自身と似ていると感じた点はありますか?
服部樹咲さん:
表情にすぐ出てしまうところは少し似ています。それから史織はすごく素直で、私もあまり噓をつけないタイプなので、そこも似ていると思いました。
シャミ:
史織はご自身と似ている部分が多いという点では演じやすかったのでしょうか?
服部樹咲さん:
お姉ちゃんや友達にべったりとくっつく感じや、大好きな親友としか遊ばないところはすごく似ていたので、演技としても違和感なく演じられました。
シャミ:
史織は機織工場の娘ということで、工場のシーンもありましたが、実際に機織り機を目の当たりにしていかがでしたか?
服部樹咲さん:
迫力がすごかったです。音が大きいので、工場に入った瞬間に全然声が聞こえなくなるんです。機械ではありますが、糸が切れてしまった時には手作業で結んで、結び目を目立たないようにするやり方があるんです。本当に細かい糸が何百万本もあるのに、それを見つけて作業をする職人さんを見て、本当に感動しました。
シャミ:
そういった職人さんに会ったり、ご自身でも機織り機に触れみた上で、機織りの魅力とは、どんなものだと感じましたか?
服部樹咲さん:
今回は何もかも初めてで、尾州地域に行くのも工場に行くのも初めてでした。機織りに限らず布になるまでにはいろいろな工程がありますが、その一部として機織りがあるということがすごく不思議でした。それから尾州が世界三大毛織物の生産地に入るということを知らなかったので、それにも驚きました。本当にいろいろなことを学ばせていただきました。
シャミ:
とても良い刺激になったんですね。服部さんご自身モデル活動もされていますが、本作を通してファッションに対する考え方などで変化があった点、刺激を受けた点はありますか?
服部樹咲さん:
布の話に限らず、この物語は史織自身が服作り始めるというストーリーで、その工程を詳しく知る良い機会になりました。今回私は演じる側として、より工程の一つひとつを肌で感じられ、他人事ではなくて自分事として学べたことは、すごく新鮮でした。糸から服ができるまで、ものづくりには本当にたくさんの方が関わっているんだとわかり、感動しました。
記者B:
完成した映画をご覧になって、率直にどんな感想を持ちましたか?
服部樹咲さん:
すごく温かい気持ちになりました。私は『ぬいぐるみとしゃべる人は優しい』という作品が好きなのですが、その映画を観終わった後にすごく優しい気持ちになって、嫌なものからふわっと解放されたような感覚になったのですが、それと似たようなものを感じました。お父さんやお姉ちゃんの思いやりだったり、それぞれを思い合う気持ちの輪に観ている側も入れたような気持ちになれました。元々そういう後味の良い映画になったらいいなと思っていたので、実際に作品を観てそういう気持ちになれたので、自分の中では成功というか、良かったなと思いました。
人前に立つ度胸はバレエで培った経験のおかげです
シャミ:
『ミッドナイトスワン』のオーディションをきっかけに俳優デビューをされていますが、最初に俳優のお仕事に興味を持ったのはいつ頃でしょうか?何かきっかけがあれば教えてください。
服部樹咲さん:
俳優に興味を持ったのは中学1年生くらいの頃です。でも何か作品を観て俳優になりたいと思ったわけではありません。4歳からずっとバレエをやって、バレエのことしか考えていなかったのですが、燃え尽きてしまったんです。海外でプロになることはできたかもしれませんが、私は負けず嫌いなのでやるなら目立ちたいし、トップで頑張りたいと考えていたので、それが無理だとわかり、プロとしてやるのは難しそうだと思いました。では、私が輝けるのはどこなのか探していたところ、急に演技ができそうだという気持ちが湧いてきたことがきっかけです。
シャミ:
その頃にちょうど『ミッドナイトスワン』のオーディションがあったということですね?
服部樹咲さん:
ちょうど俳優をやりたいと話していた頃に知り合いの方がオーディションを見つけてくれて受けました。
シャミ:
本当に服部さんのためのような役でしたよね。実際に俳優になる前と後とで、俳優のお仕事に対するイメージで変わった点はありますか?
服部樹咲さん:
こんなに頭を使う仕事だとは思いませんでした。バレエの場合は、その場で自分から出てくるものを表現するので、俳優も似ているのかなと思っていたのですが、作品に出たり、ワークショップを受けてみると、意外と頭を使う必要があると感じました。実際に演技をする時には頭を使いませんが、事前の準備段階ではすごく頭を使いますし、いろいろと細かく緻密に決めていく必要もあるので、やればやるほど難しいなと感じます。
シャミ:
すごく奥の深いお仕事ですね。幼少期からバレエをされていて、『ミッドナイトスワン』ではバレリーナ役を演じられていました。俳優のお仕事をする上でバレエの経験が活かされると感じる部分は何かありますか?
服部樹咲さん:
人前に立つ度胸はバレエで培った経験のおかげだと思います。バレエの時も舞台に立つ前は緊張しますが、いざ舞台に立ったらアドレナリンが出まくり、楽しんでできたので、カメラ前やスタッフさんがいる前で、俳優として何かを表現することは、今も楽しいなと思います。それはたぶん演技とバレエの似ている点かもしれません。
シャミ:
バレエでもソロで踊ることなどもあったと思いますが、今回は主演ということでプレッシャーに違いはありますか?
服部樹咲さん:
普段は全くプレッシャーを感じないタイプなのですが、今回は長編映画初主演ということでさすがにプレッシャーを感じました。私の演技次第で映画が良くも悪くも転がる可能性があるので、本当に責任重大だと思い、クランクインする前はかなり不安でいっぱいでした。でも、準備をたくさんしたので、いざ現場に入ったらいろいろなものに臨機応変に対応して演じることができたのかなと思います。
シャミ:
いざ現場に入って落ち着いて対応できるのはすごいですね!それもやはりバレエで培った経験があったからこそですね。
服部樹咲さん:
そうです!
シャミ:
現在は俳優やモデルとして活躍されていますが、今後挑戦してみたいことや、何か興味のあることはありますか?
服部樹咲さん:
韓国ドラマに出たいです。私は韓国ドラマが大好きでいろいろな作品を観ていたのですが、さらに韓国の友達を作って韓国語を話すようにしていたら話せるようになったんです。だから韓国ドラマに絶対に出たいというのが夢です。
シャミ:
韓国語が話せるのであればよりチャンスがありそうですね。では最後の質問です。これまでで1番影響を受けた作品、もしくは俳優や監督など人物がいらっしゃったら教えてください。
服部樹咲さん:
『二十五、二十一』という韓国ドラマが1番好きな作品です。その作品をきっかけにキム・テリさんのファンになりました。2022年から2023年にかけては、本当にそれしか観ないというくらいリピートして、何十周もしました。その作品でキム・テリさんの演技を観て、「私がやりたいのはこれだ!」とビビッときて、具体的な目標が見つかりました。俳優として今後本当にやっていていいのかという確信があまりなかった時にこの作品を観て、キム・テリさんを好きになり、私もこの俳優さんにみたいにならないと絶対に終われないというスイッチが入りました。
シャミ:
作品にもキム・テリさんからもすごく刺激を受けられたんですね。本日はありがとうございました!
2024年8月19日取材 Photo& TEXT by Shamy
『BISHU ~世界でいちばん優しい服~』
2024年10月11日先行公開、10月18日拡大公開
監督:西川達郎
出演:服部樹咲/岡崎紗絵/長澤樹/黒川想矢/知花くらら/田中俊介/山口智充(友情出演)/近藤芳正/吉澤健/清水美砂/吉田栄作
配給:イオンエンターテイメント
高校生の史織は、明るく誰に対しても優しい性格だが、配膳の配置や歩き出しの足など生活習慣へのこだわりが強く苦手なことも多い。ある日、史織が描いた服のデザインを、親友の真理子が校内のファッションコンクールにエントリーし、さらにファッションショーにも出品することになる。真理子の協力のもと史織の服作りが始まるが…。
©2024 映画「BISHU 世界でいちばん優しい服」製作委員会
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情報は2024年10月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
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