『おいしい家族』
2019年9月20日(金)より全国公開
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定
2019年7月31日、『おいしい家族』の完成披露試写会が行われ、トーキョー女子映画部の正式部員皆で参加させて頂きました。当日は、主演の松本穂香さん、ふくだももこ監督が登壇。本作はふくだももこ監督のオリジナル脚本によるもので、短編『父の結婚』を長編化させたもの。そんな本作についてどう膨らませたのかを聞かれたふくだ監督は「『父の結婚』は30分の短編やったんで、設定は一緒なんですけど、あんまり言いたかったことが伝わらなかったなというのを悔やんでて、今回はせっかく長編にできるし、家族のことだけじゃなくて、町の話、島の話と、もうちょっと広い価値観を持っていられたらいいなと思って、言いたいことを全部詰め込んで作りました」と答えました。
松本穂香さんは、初めて脚本を読んだ時の感想を問われると、「めちゃめちゃおもしろかったです。あっという間に読んじゃったという印象です。登場人物が皆可愛くて、私は橙花を演じるということがわかった上で読んだので、身構えちゃうはずなんですけど、そうでもなく、“本当に純粋に好きだな、このお話”と思ったのは覚えてます」と話し、監督は「めっちゃ嬉しい。めっちゃ嬉しいわ」と喜んでいました。
そして、監督は松本さんが橙花を演じてくれたら、きっと自分の想像を超えてくれるだろうと期待していたことを明かし、「私は一番橙花の気持ちがよくわからないというか、主人公で(キャラクターのなかでは)外にいる立場の人やから、この人が人間として立ち上がったらどう人になるんやろうっていうのがあんまり掴めてなくて。でも穂香ちゃんに決まって、現場に入って座っているのを観た瞬間から、“ああもう橙花や”と思って。ああこの子やったら絶対やってくれるって確信を持ちました」と絶賛しました。
一方、松本さんは「最初の印象とはちょっと変わりました。この作品も小説を全部読ませて頂いて、(監督は)めちゃめちゃ才能溢れてる…褒め合いみたいになっちゃうけど(笑)、普段こんな感じなのに、こんな素敵な文章も書けて、取材の時とかもすぐに相手の人を虜にするじゃないけど、すぐ懐に入り込んじゃうっていう、恐ろしい人だなと、良い意味でそういう印象です」と監督を讃えました。
そして今回、トーキョー女子映画部では事前に本作にちなんだアンケートをとっていましたが、その中で「本作で主人公・橙花の父は亡き妻の服を着て生活をしています。もしあなたが橙花だったら、そんな父を受け入れられますか?」という話題も取り上げられました。
松本さんは「私は物語を知っちゃってるので言えることだけど、最初はやっぱり家族だからこそ受け入れられないけど、家族だからこそ受け入れられる。やっぱり理由を知ると、家族だからそうせざるを得ないというか、そういう答えです」とコメント。ふくだ監督は「難しいんですけど、おかんの格好をしてるから、女装したりとか、女の人になりたいとかっていう感じに見ちゃうかも知れないし、それでも良いんですけど、どちらかというとやっぱりこの父親は母親をすごく愛しているがゆえの…なんで、それこそほんまそれを知ったら、家族だから受け入れるという感覚になると思うし。私は何でもめっちゃおもろいなと思いますけどね。あと受け入れるという感覚ともちょっと違うんかなと思いますね。その人がそうしたいんやったら、そうするしかないやんっていう感覚になりますね」と語りました。
また、父親の変化に対する橙花をどう演出したかと聞かれた監督は「橙花を悪者にしたくというのはあって、橙花っていう人物は反発はするけど、別に心から否定したいわけでは全くなくて。ただ穂香ちゃんがインタビューで言ってたのが良いなと思ったのが、“自分の知らないうちに自分の家族が変わってしまって、どんどん先に進んでって、そこに自分が含まれていなかったことが寂しくって、ちょっと反発をしてしまっているんじゃないかと思って”っていうのが、ほんまにそうやなと思って。穂香ちゃんが実際に演じててそうやったんやろうし、それを聞けて、橙花ってそうやったんやと思いました。それを小説にもちょっと活かしたし」と、改めて松本さんにお礼を伝えていました。
演じる上ですごく意識した点を聞かれると松本さんは「橙花にもいろいろな面があって、ちっちゃい子どもみたいにはしゃいだり、家族には見せない面があったりして、私はそういう部分を台本を読んで全然普通に可愛らしい、純粋な子だと思ったので。また監督が書かれるセリフが、お父さんに最後言う言葉とか、家族のことが大好きだってことがあるので、そこさえちゃんと持っていれば悪い子には見えないだろうと思って演じてました」と話しました。
最後に、松本さんは「今何かで迷われている方だったり、モヤモヤしたものを感じてらっしゃる方もいると思うんですが、もう何も考えずとにかく楽しんで観て頂けたら、そこで何かこれ良かったなとか、この人の言葉が私に刺さったなとか、何かあったら嬉しいなという気持ちです。背中を押したいとかは言いません。ただ楽しんで帰って頂けたら嬉しいです。今日はありがとうございます」と挨拶。
ふくだ監督は「この映画は私の思い描くユートピアを描いています。私の思うユートピアっていうのは、ほんまに単純なことで、ただ自分のことを大切にして、そしたら絶対に人にも優しくできるって私はそれを信じてて。でも自分を大切にするのって一番難しいんですよね。だからいろいろ大変ことも起こったりするし、すごく傷つけ合ってしまう。けど一番大事なことって、ほんまに自分のことをちょっとでも好きになって大切にすることなんですよね。そしたら今隣りにいる人が知ってる人でも知らない人でも、絶対にちょっと心に余裕ができて、その優しさがたぶんいろいろな人に伝わっていくと思うんですよね。私はそれだけを信じて映画を撮っています。それは私がたくさんの人に優しくしてきてもらったからやし、それをちょっとでも映画で人に感じてもらえたら嬉しいなと思っています。もしかしたら映画であんまり上手くいっていないところもあるかも知れんけど、私はただほんまにそれだけを伝えたいので、皆さんちょっとでも何かええなと思ってもらえたら、ぜひぜひ応援してください。ありがとうございます」と熱いメッセージで締めくくりました。
上映後には、監督が出口で一人ひとりお見送りをしてくださり、感想を言ったり、握手をしたりと、突如交流タイムも頂きました。その様子から皆何かしらを受け取って帰ってくれたんだなというのが伝わってきました。松本さん、ふくだ監督ともに、チャーミングな映画と表していましたが、伊豆諸島の新島を舞台に描かれる美しい作品となっています。一人の女性が人生の壁にぶつかり、家族や地元の温かさに触れ、再び新たな一歩を踏み出す物語として、ぜひ本作から元気と勇気をもらってください。
主人公にちなんで、皆の“真面目”エピソードを紹介!
今回、本作の主人公のキャラクターにちなんで、アンケートを取りました。橙花の真面目さに関連して、女子の皆さんから寄せられた真面目エピソードをご紹介します。
Q:あなたは真面目ですか?
■私は大学生で、遊びも学びも1:1の比率でやっているつもりですが、周りから見たら本当に真面目らしく、それは授業もほとんどサボらず、授業がない日に存分に遊び、飲み会をしたりしているかららしいです。私は大学生である前に、1人の人間として大学で堕落したくないと思い、普通のことをやってるだけなのに驚いてます。バイトもして、これから留学もして、大学生にしかできないことをこれからも楽しみたいです。(20代前半)
■はっちゃけられない。(20代後半)
■人に流されないので少しは緩く生きた方が楽なのかなとは思います。(20代後半)
■真面目ということなのか、他人のことも自分のことも厳しくジャッジしてしまうことがあり、苦しい時がある。(20代後半)
■がんばりすぎて勝手に自滅してしまうパターンに飽きたので最近は何かを始めるより何かをやめる方に重点をおいて生きている。(20代後半)
■真面目なので人の信頼を得やすいですが、その分重責を負うことも多く、心労が重なることも多いです。(30代前半)
■人や人がやった仕事が間違っている時にどうしても言ってしまいひんしゅくを買ったり、仕事で昇進できなかったりします。(30代前半)
■小さな頃から自己肯定感が低いため、常に人より努力しないといけないという気持ちが強いことから無理をしてしまうことが多い。友人や家族からも「もう少し力を抜いたほうが良いことも沢山あるよ」と言われることが度々ある。(30代後半)
■正直者が馬鹿を見る、真面目がゆえに使われやすく損をしている自覚はある。とはいえ自己アピールが苦手だし、もういいやと思いながら仕事をしている。(30代後半)
■見た目はチャラチャラしていて、何も考えてなさそうっと言われます。実際は小心者で後悔の無いように慎重派です。(30代後半)
■真面目というか、”これをすると相手はどう思うかな”と考えるばかりに行動に移せないことが多過ぎるし、それゆえに人付き合いがあまり得意じゃない(一人でいた方が気楽だと思ってしまう)ので、もっと気楽に構えることが出来れば人生違ったかな、とはよく思います。(40代前半)
■真面目だといわれるし、自覚もしていて、真面目が自分のチャームポイントだとおもっている。(50代)
■TPOを考えすぎて、いつも人より出遅れる。(50代)■長女なもので、けっこう家族のために自己犠牲を強いられている。それが当たり前になっていると感じるので。(50代)
PHOTO & TEXT by Myson
『おいしい家族』
2019年9月20日(金)より全国公開
日活
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定
夫とは別居中で、仕事も上手くいかない橙花は、都会暮らしに疲れ、母の三回忌を機に故郷に帰ることに。実家に着くと、父が亡き母の服を着て、おいしいご飯を作り待っていた。さらに、見知らぬ居候も登場し、父は「父さん、みんなで家族になろうと思う」と突然の報告をする…。
©2019「おいしい家族」製作委員会
2019.7.31 event