REVIEW
やっぱりショーン・ベイカー監督作はおもしろい!本作は一見シンデレラストーリーでありながら、ただでは終わらないだろうという期待に応えてくれる内容です。毎度のごとく、作品の世界観を表すテーマカラーのようなものが見てとれて、彩りのある映像にまず引き込まれます。

そして、何よりキャラクターが魅力的。マイキー・マディソンが演じるアノーラはとってもキュートかつスマートでありながら、心の鎧を外すと一瞬にして崩れ落ちそうな脆さもあり、人生の荒波をどうくぐり抜けるのか目が離せません。マーク・エイデルシュテインが演じる金持ちのドラ息子トロスは愛嬌があり無邪気だからこそ、真意が読めない点で物語をドラマチックにしています。『コンパートメントNo.6』の名演が記憶に残るユーリー・ボリソフは、静かにジワジワと存在感を表し、物語のキーマンとして本作でも観客を魅了します。

前半と後半でガラッとトーンが変わる本作は、キュートでエネルギッシュでちょっと意地悪なストーリーです。だからバッドエンドと受け取る方もいるかもしれません。ただ、本当の幸せとは何かを考えれば、本作は最高のハッピーエンドであり、アノーラがそのことに気づくまでの物語といえるのではないでしょうか。
ここからはあくまで私個人の解釈です。ネタバレしないように書いていますが、鑑賞後に読むことをオススメします。

アノーラは自分の価値をわかっているようでわかっていなかったのだと感じます。職業柄、性的な魅力には自信があり、”ビジネス”上の関係なら冷静さを保てるし優位に立てる。つまり、性の対象としての自分の価値は十分にわかっていると思います。でも、”ビジネス”を超えて一人の女性として相手に期待するものが出てくると、愛なのか執着なのかわからない感情が芽生えてきて、相手に振り回されることになります。

そんなアノーラに対して、イゴールだけは最初から敬意を持って接しています。でも、性の対象としてのみ扱う他の男性達とは態度が違うので、アノーラからすると逆に珍しく思えても無理はありません。ラストで、アノーラはイゴールの反応によって、自分の存在価値に気づけた嬉しさと、それまでの悔しさと、やるせなさが込み上げてきたのではないでしょうか。本作は前半がまやかしのシンデレラストーリー、クライマックスが本当のシンデレラストーリーに思えます。
デート向き映画判定

自分のことを大切にしてくれる人とはどういう人なのかを教えてくれるストーリーなので、付き合うべき相手を間違えていることに気付く可能性があります。なので、観終わった後に相手を一層愛おしく思えるか、急に気持ちが冷めてしまうか、読めないところがあります(苦笑)。相手への気持ちよりも、条件優先で交際を始めた方はデートではなく、1人でじっくり観るほうが良いでしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定

アノーラはちゃんと自分自身のことを大事にしていて、自分で自分のことを守り、冷静さも持っています。それでも、希望を持って踏み込んだ選択をした後は翻弄されます。ただ、恋愛は先が読めないのは皆同じで、試してみないとわかりません。そして、人が成長する機会は恋愛に多くあると思います。本作を観て擬似体験をすると、いろいろと学べることがあるように思います。R18なので18歳になったらぜひ観てみてください。

『ANORA アノーラ』
2025年2月28日より全国公開
R-18+
ビターズ・エンド
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2025年2月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。