自分でも自分がわからないという感覚、目を背けてしまっている自分の一面を突きつけられるストーリー。若かりし頃に誰もが抱えるさまざまな思いを、いろいろなキャラクターに投影していて、それぞれのキャラクターに共感できます。大人になるにつれて、だんだんと自分の嫌いなところがはっきりと自覚できてしまうけれど、それを受け入れたくなくて葛藤するキャラクター達。青春映画なので大人が観ると懐かしい感覚もありますが、どんなに大人になってもぬぐいきれない感情が呼び起こされるので、観る人の年齢を選ばない作品です。相手を傷つけたくないけど、自分も傷つきたくないという心情もリアルで、そこに向き合う勇気が持てたら、その先に何があるのかを本作は見せてくれます。横浜流星、飯豊まりえの演技も素晴らしく、キャラクターが抱える複雑な心境が身近に感じられる点も本作の見どころの一つです。個人的に、物心がついた頃から内省するクセがついているのでこういう世界観にはすごく共感するし、いろいろ思い出して涙が出ました。苦しいけれど、最後には一筋の光を与えてくれるので、1人で悩みがちな人はぜひ観てみてください。
若者達の葛藤を軸に、さりげなくラブストーリーもあって、キュンキュンするポイントはあります。ただ、明るいストーリーとは言えないので、気楽に映画を観て過ごしたいデートの日には不向きだし、この映画を観た後にどんな心情になるかは、個人差がはっきり出そうなので、相手の反応とあまりにギャップがあると、相性を疑いたくなるかも知れません。初デートには不向き、ある程度腹を割って話せるくらいになったカップルにオススメです。
キッズやティーンの皆さんにはどんぴしゃのストーリーで、いろいろなキャラクターが登場するので、どこかしら共感できるところが見つかると思います。人間には、言葉や表面的なことだけでは理解できないことが多々あります。それは親しい仲でも同じことで、逆に親しいからこそ考え過ぎてわからなくなることもあるはずです。主人公の葛藤を観ると、そんな悩みを解決に導くヒントを見つけられるかも知れません。
『いなくなれ、群青』
2019年9月6日より全国公開
KADOKAWA、エイベックス・ピクチャーズ
公式サイト
© 河野裕/新潮社 © 2019映画「いなくなれ、群青」製作委員会
TEXT by Myson