太極図に象徴される陰と陽が、ストーリー、キャラクター設定、人物相関図、アクションと、あらゆるところに投影され、太極図そのものもデザインとして、あらゆるシーンに印象的に使われています。そういった演出に高い芸術性が感じられると同時に、エンタテインメントとしての魅力はもちろん、哲学的なストーリーにも引き込まれます。
影武者として生きることを受け入れた男、影武者に自分の運命を託した男の物語が軸となっていますが、物語のトーンが前半、中盤、ラストと大きく変わっていく点が見どころで、特にラストは一件落着したと思ったら、もう一段階オチがあります。それこそがこの物語が本当に語りたいことだと思いますが、どんなに立派な偉業を成し遂げても、人間が陥ってしまう罠があって、それは他人によるものではなく、自分でそこに堕ちていくんだという教訓のようにも受け取れます。それは、何事にも陰と陽という2つの面があるということの象徴だと考えると、本当に深い話です。そして、都督と影武者の一人二役を演じたダン・チャオの演技も素晴らしい。アクションで使われる武器や、その発想の源もとてもユニークで、中国の個性が光る作品になっています。チャン・イーモウ監督作として抱く期待を裏切りませんよ。
本作で描かれる奥ゆかしくロマンチックな悲恋は、デートのムードを盛り上げるでしょう。設定は自分達の日常に置きかえるようなものではないので、気まずいこともありません。人間ドラマ、アクション、ラブストーリーと、それぞれの要素がバランス良くある作品なので、男女問わず楽しめるはず。芸術的な描写も多いので、派手なアクションが苦手という人でも誘ってオーケーでしょう。
PG-12なので12歳未満の人は保護者と一緒に観てください。舞うように戦うアクションシーンはとても美しく、武器もユニークでカッコ良いです。太極図が象徴する陰と陽の考え方が、人間理解や、戦略などいろいろなところで活かされている点にも注目すると、万物の成り立ちみたいなところにも繋がりを感じて、おもしろみが増すでしょう。でも難しい観方をしなくても、アクションを楽しむ、ラブストーリーを楽しむという観方でも良いと思います。
『SHADOW/影武者』
2019年9月6日より全国公開
PG-12
ショウゲート
公式サイト
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TEXT by Myson