『レディ・バード』の制作陣と、『ムーンライト』『ルーム』を手掛けた気鋭スタジオ“A24”が制作した本作は、エイス・グレード(8年生=中学3年/日本では中学2年生の年)の少女ケイラが主人公のキュートな物語。学校では大人しく無口で、友達もいないケイラは、ネットでは自分がホストを務める自作の動画をアップしていて、SNSに夢中です。家族はお父さんと二人暮らしですが、思春期のせいか、お父さんをうざがっています。この時期は家庭以外のところで居場所を見つけるのに必死になりがちですが、自分の居場所をまだ見つけられていないケイラは、勇気を出していろいろな人と関わりを持とうとしてもなかなかうまくいかず、日々の一喜一憂が描かれていきます。10代って自分の心の中ですごく戦っていて、学校や友達の世界がすべてという感覚がすごくリアルに伝わってきます。心の中ではすごく前向きなのに、実生活ではすごく臆病。笑いたくないのに笑ったり、人に合わせることに必死になって、本当の自分がわからなくなってしまう感覚は、世代を問わず共感できるでしょう。お父さんがどんなに娘に愛を伝えても、自分のいろいろな問題は、自分自身で消化しないと気が済まないのも、こういうお年頃の特徴ではないでしょうか。それが親離れの過程でもあって、ケイラの奮闘も観ていて愛おしいし、娘に突き放されながらも優しく彼女を見守る父の姿にもキュンとします。とにかくケイラがすごくキュートで、彼女の魅力的なキャラクターで悲壮感だけで終わらない作品になっています。切ないシーンもありますが、笑えるシーンもあり、心がすごく温かくなる作品です。
思春期独特の思考や行動の傾向をコミカルに描いていて楽しい映画ではありますが、多少卑猥な用語が出てくるので、エロ要素に敏感な人には気まずく思える可能性があります。エロチックなシーンはなく、言葉だけの問題なので、そこまで過剰に反応する人は少なそうですが、初デートで誘う場合は一応念頭に入れておいてください。
中学最後の年を過ごしている主人公の物語なので、皆さんの世代にドンピシャなストーリーです。SNSに夢中になったり、同級生の顔色をうかがったり、人には言わないけれど、日々いろいろなことが気になって、心が傷つくことも多いでしょう。でも、本作の主人公が奮闘する姿を観ると、今はこんなに苦しくても、明るい未来がありそうだという希望が湧いてくると思います。
『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』
2019年9月20日より全国公開
トランスフォーマー
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TEXT by Myson