良い意味で“バットマン”シリーズ、DCシリーズかどうかはどうでも良いと思えてしまうくらい強烈な映画です。これまでいろいろな作品で観てきたゴッサム・シティを全く別の角度から観られるストーリーになっていて、架空の都市でありながら今の私達の現実社会をすごく生々しく投影していて、他人事として観られません。ジョーカーのキャラクターもこれまでにないもので、共感すら覚えてしまう引力があります。自分の存在がこの世にあるのかわからない、自分の価値がわからない…という状況に追い打ちをかけるように、自分が知らなかった事実が明かされていき、自分のこれまでの人生、そして自分自身が否定されてしまう。何を信じて良いかわからない偽善だらけの社会で、ジョーカーは生まれてしまったのだと思います。もしかしたら人気のあるヴィランだけに、本作のとても人間味のあるジョーカーについては、好みが分かれるのかも知れませんが、こんなキャラクターに昇華させるとは驚きであり、称賛に値します。そして何よりホアキンの演技、役作りは驚異的で、虐げられてきたからこそアーサー(=ジョーカー)の変貌ぶりがいろんな意味で恐怖を煽ります。社会を怖いと思うか、社会が生む悪を怖いと思うか、それとも自分の中の闇に気付くか…、とにかく観た後にしばらく余韻が残る映画です。必見!
心をえぐるストーリーで、デートを盛り上げてくれるようなテンションはありませんが、一緒に観て気まずいことはなく、とても見応えがあるので、2人とも興味があるのならデートで観るのもアリだと思います。「あれって、○○なの?」「あのシーンって…」と、人と語りたくなる要素もあるので、映画好きカップルには打って付けです。
R-15なので15歳未満の人は観られません。社会の闇、人間の闇に焦点を当てたストーリーで、誰の心にも響く内容だと思うので、ぜひ観られる年齢の人は観て欲しいと思います。先入観で人を観たり、見下したり、理解しようとしなかったり、時代や国を問わず私達の日常でよくあることの積み重ねが、人を狂わせていく…。この世の中で本当に怖いものは何か、考えるきっかけになると思います。
『ジョーカー』
2019年10月4日より全国公開
R-15+
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
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TEXT by Myson