生みの母と、育ての母、両方とも子どもへの愛は深く、とても難しいテーマを扱っています。事情があって子どもを育てられなかった生みの母の心情にも共感できるし、育ててきた両親の気持ちも痛いほどわかります。子どもがどちらといるのが幸せかなんて誰にもわからない状況のなかで、子どものことを一番に考えてそれぞれの母親がどんな決断を下すのか、最後まで予想がつかない展開を見せます。子どもを持つ責任の重さ、子どもを産めない辛さといった、その背景にも考えさせられるところがあり、女性のさまざまな生き方を映し出している点も見どころの一つです。辛く切ない物語ではありますが、愛に満ちた作品となっています。
母親とは何ぞやというテーマで、女性向けではありますが、家族とは何ぞやと、夫婦、家族の在り方を問う部分もあるので、真剣交際をしているカップルなら一緒に観てお互いの考えを語り合うと有意義だと思います。日本ではまだこういうケースは多くはないと思いますが、いろいろな家族の形があって良いという考えのカップルが増えると、こういう状況に遭遇することもあるかも知れません。家族観を語るきっかけに観てはいかがでしょうか。
子ども目線で観て「自分にもう1人お母さんがいたら…」と考えると、複雑に思える部分もあると思いますが、親の愛情の深さを実感できると思います。また、血で繋がっていることだけが親子の証ではなく、育ててくれたこと、そこで強くなった絆も家族の証であることが理解できて、いろいろな家族があって良いという概念に触れることができるでしょう。
『夕陽のあと』
2019年11月8日より全国順次公開
コピアポア・フィルム
公式サイト
©2019長島大陸映画実行委員会
TEXT by Myson