本作は、『半落ち』『クライマーズ・ハイ』『64(ロクヨン)』などで知られるベストセラー作家、横山秀夫の原作を映画化。ある事情で盗みを働くようになった主人公の物語で、その”事情”にドラマが隠されています。主人公だけでなく、他のキャラクターもすごく謎めいていて、前半はそれぞれのキャラクターの背景がじわじわと明かされていくので、サスペンス的な要素に引き込まれるでしょう。後半は、主人公の謎が明かされたところで一度驚かされながらも納得し、最後にはさらなる謎が明かされ、もう一つの主要なテーマに気付かされたところで、この作品の色が変わる瞬間が味わえるはずです。主演の山崎まさよしをはじめ、尾野真千子、北村匠海、滝藤賢一、竹原ピストル、大竹しのぶなど、味のある演技を見せる俳優陣がずらり揃っている点でも見応えがあります。何となく男性が好きそうな作品に思えますが、女性キャラクターのドラマもさまざまなので、いろいろな視点で観られます。
ある意味でプラトニックな大人のラブストーリーでもあるので、カップルで観るのもアリでしょう。愛があるからこそ辛くなる展開は、観る側の雰囲気も盛り上げてくれるかも知れません。また、不器用さん同士のカップルも共感できる内容です。知り合ってから長いのに、自分達自身の問題以外で進展せずにいるカップルは、より本作に感情移入できると思います。
大人向けの作品で、テンションもシリアスなので、せめて中学生以上になってから観るほうが楽しめるように思います。難しいストーリーではありませんが、多少理解力がいる部分というか、カラクリがあります。そういった意味で、ティーンの皆さんが観るとしたら、小説をよく読む人や、映画を観慣れてきた人向けではないでしょうか。
『影踏み』
2019年11月8日群馬県先行公開、11月15日より全国公開
東京テアトル
公式サイト
©2019 「影踏み」製作委員会
TEXT by Myson