間宮祥太朗が演じる小坂れいと、桜井日奈子が演じる鹿野ななが主人公でありつつ、ほかのキャラクター達も含めた群像劇で、高校生達の恋愛の悩みと同時に、日々を生き抜こうとする奮闘を描いています。死にたいと思っている鹿野なな、「死にたいなら死ね」と彼女に言いつつ、優しく寄り添う小坂れい。2人の会話には「死にたい」「死ね」「殺せ」「殺すぞ」といった、言葉じりだけ聞くと乱暴な言葉が出てきますが、本作では逆にその言葉の裏に優しさ、愛があるからこそ、逆の意味に捉えられるといった描写が印象的です。絶望からくる”死”への距離感と、希望からくる”死”との距離感の変化が絶妙で、高校生同士の何気ない会話から、彼らの成長がうかがえます。メインのキャラクターは、学校の中に1人はいそうなタイプですが、彼らが普段表には出さない心情に主にフォーカスしている人間ドラマなので、単なる学園モノにとどまらない作品になっています。悲しいけれど温かい作品で、最後には元気と勇気をもらえるはずです。
主人公達は、お互い憎まれ口をたたきあいながらもとても仲の良いカップルで、その不器用さに共感できると思います。また間宮祥太朗が演じる小坂れいのさりげなくて自然な優しい態度や行動は、ぜひ見習いたいところ。相手の存在の大きさが実感できるストーリーなので、鑑賞後に2人の距離がグッと縮まるでしょう。そういった意味では、「相手がいて当たり前」と思ってしまっているマンネリカップルにもオススメです。
人柄は言葉の表面的なところではなく、人に対する姿勢に表れるのだと客観視できます。なので、本当に自分に合った友達が誰なのかを見つめ直すこともできるでしょう。同時に自分がどんな状態にあっても心配してくれたり、時に厳しくしてくれる友達が既にいたとしたら、その友達の大切さも実感できるはずです。本作にはいくつかのラブストーリーが描かれていますが、ラブストーリーとして観ても、青春映画として観ても、響くところがあると思います。
『殺さない彼と死なない彼女』
2019年11月15日より全国公開
KADOKAWA、ポニーキャニオン
公式サイト
© 2019映画『殺さない彼と死なない彼女』製作委員会
TEXT by Myson