特集

あなただけのキャリア10:偶然の出来事をチャンスにできるか【計画的な偶発性理論】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『TOVE/トーベ』アルマ・ポウスティ

コロナ禍が長く続き、自分自身のお仕事について見直している方も多いのではないでしょうか。もちろんコロナ禍でなくても、どんな仕事に就くか、1度仕事を得てもそれをどれだけ続けるのか、いつか転職するのか、ずっと同じ仕事をするのかといった悩みは、人生の節目節目で誰にでも起こり得ます。

キャリア形成において、自分の特性と職業、働き方のの性質をマッチングさせて考える理論もありますが、今回は未決定であることが望ましいというユニークな考え方に基づく、ジョン・クランボルツによる【計画的な偶発性理論】をご紹介します。

クランボルツの理論は、人は学習し続ける存在という考え方の上に成り立っています。そして、ここでいう学習とは「新しい行動を獲得したり、行動を変化させること」であり、「人は従来の行動を変化させたり、新しい行動を獲得することによって、変化し続ける環境に適応していくことができる」と考えられています(渡辺ほか,2018)。

未決定を良しとし人間は学習し続ける存在という考え方からは下記のような捉え方ができます。以下はクランボルツが「クライエント(キャリアの悩みを抱えた相談者)が対処しなければならない動向として、キャリア・カウンセリングの観点から挙げたものの一部です。

●クライエントは、今既にある特性に基づいた意思決定ではなく、自分の能力や興味を広げていく必要がある。
●クライエントは、職業が安定したものと思い込むのではなく、変化し続ける仕事に対して準備をしなければならない。
●クライエントは、診断を下されるのではなく、行動を起こすように勇気づけられる必要がある。
(渡辺ほか,2018)

つまり人間は学習し続けることで変化するのであるから、変化の過程で適した仕事が変わるのは当たり前であり、さまざまな経験を積み学習し続けることで、変化し続ける環境に適応していくことができるということです。例えば、学生の頃は映画監督になりたいと思っていたとしても、その後のその人の経験、そこで何を学んだかによって道は変わっていくのは当然のことです。

映画『キネマの神様』菅田将暉/野田洋次郎

映画『キネマの神様』では、映画監督を目指す主人公が与えられた大きな機会を前にして、自分が思っていたようにできず、そこから人生がガラッと変わってしまう様子が描かれています。一方、映画『TOVE/トーベ』のトーベ・ヤンソン(ムーミンの生みの親で実在の人物)は、偶発的に起こった出来事に乗っかってみる様子が印象的です。もちろんトーベも苦労なく順調にキャリアを積めたわけではないことが映画を観るとわかりますが、偶発的な出来事が起こってもそれに向き合う姿勢があったという点で良いお手本に思えます。

渡辺(2018)では、クライエントがキャリア問題において混乱している場合の多くは直面している問題がこれまでのスキルや興味を超えている場合であるとしています。

こう聞くと、混乱するのは当然だと思えて、少し気持ちが落ちつきますよね。そして、必ずしも今の能力、特性ですべてが決まるわけではなく、人生を歩んでいく上で都度マッチした仕事、働き方を見つけ、変化し続ける環境に合わせて、自分も変化すれば良いということになります。もちろん転職しろということではなく、同じお仕事を続ける、同じ目標を追いかけるとしても関わり方を変化させていくことで適応し、次の手が見つかるということです。

映画『TOVE/トーベ』アルマ・ポウスティ

計画的な偶発性理論では、人が偶然の出来事を作りだし、認識し、自分のキャリア発達に組み入れていけるようになることを目標としています。つまり偶然の出来事はチャンスであり、それを逃さないようにすることが大切だということです。

偶然の出来事を捉える5つのスキルとして、クランボルツは[好奇心・持続性・柔軟性・楽観性・冒険心]を挙げています。これを意識して日々を過ごし、偶然の出来事に慌てず拒否せず歓迎する姿勢がもてれば、自分らしいキャリアを形成していけるのではないでしょうか。

<参考・引用文献>
渡辺三枝子ほか(2018)「新版 キャリアの心理学[第2版]キャリア支援への発達的アプローチ」ナカニシヤ出版

オススメのお仕事映画

映画『TOVE/トーベ』アルマ・ポウスティ

『TOVE/トーベ』
2021年10月1日より全国公開中

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

本作のストーリーの軸はラブストーリーですが、トーベのキャリア発達に焦点を当てて観てもおもしろい内容です。

© 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved

映画『キネマの神様』沢田研二/菅田将暉/菅田将暉/永野芽郁/野田洋次郎/北川景子/寺島しのぶ/小林稔侍/宮本信子

『キネマの神様』
2021年8月6日より全国公開中

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

主人公の仕事仲間のテラシンは、うまく偶然の出来事をチャンスにしてきた例ではないでしょうか。

© 2021「キネマの神様」製作委員会

TEXT by Myson(国家資格キャリアコンサルタント/認定心理士)

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『マイ・インターン』アン・ハサウェイ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】総合

今回は、海外40代(1975年から1984生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で80名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。今回はどんな結果になったのでしょうか?

映画『ザ・バイクライダーズ』オースティン・バトラー ザ・バイクライダーズ【レビュー】

“バイクライダー=バイク乗り”とは、どんな人物をいうのでしょうか…

Netflix映画『マイケル・ジョーダン:ラストダンス』マイケル・ジョーダン 心が弾む!バスケットボール映画特集

バスケットボール人気が出てきているのを感じる昨今。…今回は、バスケットボールにちなんだ作品をズラリとご紹介します。

映画『リュミエール!リュミエール!』 リュミエール!リュミエール!【レビュー】

映画の始まりが述べられる際、トーマス・エジソンと、リュミエール兄弟(ルイとオーギュスト)の名前がよく挙がります…

映画『デューン 砂の惑星PART2』ゼンデイヤ ゼンデイヤ【ギャラリー/出演作一覧】

1996年9月1日生まれ。アメリカ出身。

映画『チネチッタで会いましょう』ナンニ・モレッティ/マチュー・アマルリック チネチッタで会いましょう【レビュー】

タイトルに入っている“チネチッタ”とは…

Netflixドラマ『さよならのつづき』有村架純/坂口健太郎 ポッドキャスト【だからワタシ達は映画が好き22】2024年11月後半「気になる映画とオススメ映画」

今回は、2024年11月後半に劇場公開される邦画、洋画、Netflixの最新ドラマについてしゃべっています。

映画『Back to Black エイミーのすべて』マリサ・アベラ Back to Black エイミーのすべて【レビュー】

類稀な才能を持つ歌姫エイミー・ワインハウスは、2011年7月、27歳の若さで逝去…

映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』川栄李奈さんインタビュー 『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』川栄李奈さんインタビュー

真面目な公務員と天才詐欺師チームが脱税王との一大バトルを繰り広げるクライムエンタテインメント『アン…

映画『ドリーム・シナリオ』ニコラス・ケイジ ドリーム・シナリオ【レビュー】

ニコラス・ケイジ主演、『ミッドサマー』のアリ・アスターとA24が製作、さらに監督と脚本は『シック・オブ・マイセルフ』のクリストファー・ボルグリと聞けば、観ないわけには…

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『マイ・インターン』アン・ハサウェイ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】総合

今回は、海外40代(1975年から1984生まれ)のイイ俳優の中から、昨今活躍が目覚ましい方を編集部の独断で80名選抜し、正式部員の皆さんに投票していただきました。今回はどんな結果になったのでしょうか?

映画『淪落の人』アンソニー・ウォン/クリセル・コンサンジ 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.2

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』ムロツヨシ 映画好きが推すイイ俳優ランキング【国内40代編】個性部門

個性豊かな俳優が揃うなか、今回はどの俳優が上位にランクインしたのでしょうか?

REVIEW

  1. 映画『ザ・バイクライダーズ』オースティン・バトラー
  2. 映画『リュミエール!リュミエール!』
  3. 映画『チネチッタで会いましょう』ナンニ・モレッティ/マチュー・アマルリック
  4. 映画『Back to Black エイミーのすべて』マリサ・アベラ
  5. 映画『ドリーム・シナリオ』ニコラス・ケイジ

PRESENT

  1. 映画『バグダッド・カフェ 4Kレストア』マリアンネ・ゼーゲブレヒト/CCH・パウンダー
  2. 映画『型破りな教室』エウヘニオ・デルベス
  3. トーキョー女子映画部ロゴ
    プレゼント

PAGE TOP