キャリアデザイン

あなただけのキャリア6:仕事とは日常である

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ソウルフル・ワールド』

前回に続き、職業選択についてのお話です。前回は、就職活動をする前に、自分のことを知る必要があり、さまざまな理論を基に自分の特性や要望を見極めていくのも1つの手だとお伝えしました。でも、自分が何が得意で、どんな仕事に向いているか、働く上でどんな条件を優先すべきかは、自分でわかっているようでわかっていないことも多々あるはずです。だからこそ、第三者の姿や意見は、いろいろな意味でとても参考になります。

『ソウルフル・ワールド』は、そんな要素がたくさん詰まった作品です。ここからネタバレが含まれるので、何も知らずに映画を観たい方は、本編を観てから下記を読むことをオススメします。

『ソウルフル・ワールド』は、ジャズ・ピアニストになる夢をずっと持ち続けているジョーという男性が主人公です。彼はずっとその夢を追いかけてきましたが、まだ叶えられておらず、今は学校で音楽の先生をしています。そんな彼にようやくチャンスが訪れるのですが、ここから彼は予想外の経験をしていきます。彼はとあることをきっかけに、生死を彷徨うことになるのですが、その時に魂の世界に紛れ込みます。そこで22番と呼ばれる魂と出会い、22番が“きらめき”を見つけて地上の世界で人間として生まれることができるように、ジョーはメンターになります。

ジャズ・ピアニストになるという明確な夢を持っているジョーと、きらめきを見つけられない22番。ここでこの映画を観ている私達は、世間一般にある「将来、才能を発揮できる職業や特技」がきらめきと言われているのだと思いながら、ストーリーを追うことになります(映画の演出上、そういう風に観るように仕向けているのもあって)。

映画『ソウルフル・ワールド』

22番はそういったきらめきを魂の世界では全然見つけられないでいますが、今度はジョーと共に誤って地上の世界に紛れ込んだ時に、きらめきを見つけます。でも、22番が見つけた“きらめき”は、職業には全く関係ないというのがミソなんです。

一方、ジャズ・ピアニストになりたいと明確に思っていたジョーは、死を免れて再びジャズ・ピアニストになれるよう挑みます。ここでサクセスストーリー終了となりそうなものですが、ここまでの流れからして、この映画が言いたいのはそこではないのは、きっと皆さんお気づきになるはず。夢に抱いていた職業に就くスタート地点に立てたジョーが、人気歌手に言われる一言にはとても現実的なメッセージが込められています。それは、“仕事とは日常である”ということ。

どんなに夢見た仕事でも、それが現実になれば、もう夢ではなくなり、日常の一部になります。最初はワクワクしていたことも、少なからずルーティーンになっていきます。それは悪いことではもちろんありませんが、ある意味夢から覚めた時に、それでもその仕事を続けられるか、その仕事を楽しめるかというところまで行き着いてやっと「好きな仕事」だったかがわかるということだと思います。

この連載のVol.2で「“好きな仕事をする”の意味を考える」というテーマの中で、好きな仕事といっても定義がさまざまであること、そして今それが好きだと思えても、生きていく上でどんどん変化していくことをお話しました。「夢に描いていた通りの仕事に就けて幸せだ」と思っている場合でも、「思っていたのと違う」といった場合、「楽しかったけど、飽きた」という場合でも、そういった心の変化は少なからず起こります。だから、今やりたいことを見つけていても安泰ではないし、見つかっていないから絶望的というわけではないのです。

好きなこと、夢中になれることが見つかっていたらいたで、その時向かう方向が定められるのは良いですが、見つかっていなくても大丈夫。ジョーの経験は「好きな仕事をする」のその先と言えますが、現実に直面したジョーが、その後どんな思いで生きていこうとするのかが、まさに大事なところで、ぜひそこは本作を観て確かめて頂きたいと思います。

映画『ソウルフル・ワールド』

22番のきらめきは、直接は職業に関係ありませんでしたが、生きていく上でとても大切なことです。むしろ人のためになる仕事をするには、22番が得たきらめきのようなことが1番大事になってくるのだと思います。だから、好きなことが見つからない、どんな仕事をやれば良いのかわからないと焦ってしまっている人は、一旦仕事に結びつけて考えるのをやめて、遊びでも何でも良いから、自分が素敵だなと思える瞬間を観察してみてください。「これが何に繋がるの?」と思うかもしれませんが、「こういう感情が自分にわく瞬間って、他にどんな時があるのかな」と日々探していると、きっとヒントが見つかるはずです。また、自分では気付かないきらめきもあるはずなので、家族や友人からも意見を聞いてみることはとても有効です。

オススメのお仕事映画

映画『ソウルフル・ワールド』

『ソウルフル・ワールド』
2020年12月25日よりディズニープラスにて独占配信中

REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

「仕事とは何か」「生きていく上で大事なこととは何か」を考える視野を広げてくれる作品です。

© 2020 Disney/Pixar.

TEXT by Myson(国家資格キャリアコンサルタント/認定心理士)

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『新解釈・幕末伝』ムロツヨシ/佐藤二朗 新解釈・幕末伝【レビュー】

幕末を描いた本作は、“新解釈”とタイトルにあるように、ユニークな解釈で描かれて…

映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』来日ジャパンプレミア、ジェームズ・キャメロン監督、山崎貴監督、宮世琉弥 お互いの才能を讃え合うジェームズ・キャメロン監督と山崎貴監督、若者代表、宮世琉弥も感動『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』来日ジャパンプレミア

最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』のワールドツアーの一環として、ジェームズ・キャメロン監督が3年ぶりに来日。山崎貴監督と宮世琉弥も会場に駆けつけました。

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』八木莉可子 八木莉可子【ギャラリー/出演作一覧】

2001年7月7日生まれ。滋賀県出身。

映画『グッドワン』リリー・コリアス 『グッドワン』トーク付きプレミア試写会 10組20名様ご招待

映画『グッドワン』トーク付きプレミア試写会 10組20名様ご招待

映画『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』コリン・ファレル/マーゴット・ロビー ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行【レビュー】

「人生をやり直せるドア」が登場する点と、コリン・ファレルとマーゴット・ロビーが向かい合うキービジュアルから、恋愛をやり直すストーリーかと思いきや…

映画『サリー』エスター・リウ 『サリー』特別試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『サリー』特別試写会イベント 5組10名様ご招待

映画『THE END(ジ・エンド)』ティルダ・スウィントン/ジョージ・マッケイ/モーゼス・イングラム/ブロナー・ギャラガー/ティム・マッキナリー/レニー・ジェームズ/マイケル・シャノン THE END(ジ・エンド)【レビュー】

REVIEWいつも通り観賞前にほぼ何も情報を入れず、登場人物はいつの時代にどこに住んでいる…

映画『シェルビー・オークス』 シェルビー・オークス【レビュー】

かつて繁栄しながらも今は廃墟と化しているシェルビー・オークスという町で…

映画『ナイトフラワー』渋谷龍太 渋谷龍太【ギャラリー/出演作一覧】

1987年5月27日生まれ。東京都出身。

映画『悪魔祓い株式会社』マ・ドンソク/ソヒョン/イ・デヴィッド 悪魔祓い株式会社【レビュー】

本作は、『悪人伝』や“犯罪都市”シリーズ、ハリウッド映画『エターナルズ』などでお馴染みのマ・ドンソクが…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『新解釈・幕末伝』ムロツヨシ/佐藤二朗
  2. 映画『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』コリン・ファレル/マーゴット・ロビー
  3. 映画『THE END(ジ・エンド)』ティルダ・スウィントン/ジョージ・マッケイ/モーゼス・イングラム/ブロナー・ギャラガー/ティム・マッキナリー/レニー・ジェームズ/マイケル・シャノン
  4. 映画『シェルビー・オークス』
  5. 映画『悪魔祓い株式会社』マ・ドンソク/ソヒョン/イ・デヴィッド

PRESENT

  1. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
  2. 映画『サリー』エスター・リウ
  3. 映画『ツーリストファミリー』シャシクマール/シムラン/ミドゥン・ジェイ・シャンカル/カマレーシュ・ジャガン/ヨーギ・バーブ
PAGE TOP